第93話 閉会パーティー
『えー…では、これから表彰式を始めるぜ!皆、大きな拍手をしてくれよ!』
リタイアした子達も審判の子達もカメラマンも荷物役もみーんな戻ってきた所で表彰式が始まった。各チーム全員が前に並んでいる
『第6位、どいつもこいつもトキ!第5位、自由気ままにパトロールし隊!第4位、カラフルバーズ!第3位、オウルウォール!』
呼ばれたチームのリーダーが順々に前に出て、お辞儀をしたり、手を振ったり、バンザイしたり、ドヤ顔を決めたりしている。いやショウジョウトキさん、貴女リーダーだったのなら歌我慢するべきだったよ
『第2位、スカイダイバーズ!最後のデッドヒートは見事でした!』
「今回は負けちまったけど、次は絶対に勝つ!」
「悔しいですが、とても楽しかったです」
「次はもっと楽しみたいわね」
「あっ!あとオレ達スカイダイビングもやってるんだ!興味があるやつは声をかけてくれよ!」
宣伝もかかさない。体験学習はゴマバラワシさんがしてるだろうから、今回の結果と合わさって効果は大きいだろう。彼女の楽しいに巻き込まれるのは大変だろうけど…
『そして第1位、スカイインパルス!おめでとうございます!』
「ありがとう!」
「素直に嬉しいわ」
「誇りに思う」
「だけど、私達はこれで満足しないわ。今よりもっと速く、もっと力強く飛ぶ。誰も追い付けないくらいにね。そして、スカイレースは今回で終わりじゃない。次回も私達が優勝する!皆の挑戦、待ってるわよ!」
流石ハクトウワシさん、更なる高みをもう見据えている。チェックポイントを間違えた時も冷静に対処していた。彼女達は強いから挑戦者は大変だろうね
博士が賞品のジャパリまんとぺぱぷのプレミアライブチケットを渡すと、大きな拍手と歓声が巻き起こる。色々あったけど、取り敢えずは成功したといっていいだろう
『次に、博士から一言頂きます。どうぞ!』
『えー、博士です。今日このスカイレースが成功したのは、ここにいる皆のお陰なのです。お疲れ様なのです。ありがとうございました』
おおっ、長っぽいこと言ってる。なんか感動
『大会の感想としては、半分がリタイアしたのは予想外でしたが、それを差し引いても中々面白い展開があったと思いました』
スリップストリーム、不意打ちの歌、ドリフト、急降下加速、プライドのぶつかり合い。追いかけているだけだったけど見てて面白かった
『次回に関しては未定です。ルールの見直しや修理が必要ですので。ですがやらないわけではないので、それまでに力をつけておくのです。そして、多くのチームが参加するのを楽しみにしています。以上です』
そこなんだよね…。今回の6チームは多いわけじゃないと思うし、ゴンドラについてももう少し何か工夫が出来たと思う。それに関しては皆と意見交換をしながら決めていくのもいいかもしれない
『では次に、このレースを復活させた人物を紹介するぜ!コウ、前に出てきてくれ!』
今回のこれは、ライブの時のように無理矢理ではなく事前に言われていたことだ。ただやっぱり緊張する…。マイクを渡された時に落としそうになったよ
『えー…紹介されましたコウです。皆、今日は楽しんでくれたかな?』
\タノシカッター!/\ツギハワタシモヤルー!/\マンゾク…シタゼ…/
『それは良かった(満足民がいる…)。ただ博士も言ったけど、次回までにやることは結構あるから、皆また協力お願いしますね。…それと、俺がスカイレースを復活させた、と言われたけどそうじゃない。皆で復活させたんだ。だから、俺からもお礼を言うよ!ありがとう!俺も今日は楽しかった!以上です!』
皆が頑張ったから、皆で助け合ったからできたんだ。だから、お礼を言うのは俺の方だ
『これで、第一回スカイレースは終わりだ!この後は運営から豪華料理が出るから、皆存分に食べて帰ってくれよな!』
さて、ここからは俺の大仕事だ。料理はカレーだけじゃないってことを嫌というほど教えてやるぜ!
*
「ふぅ…。これで、一息つけるかな…」
あれから結構時間が経ち、ようやく俺も休憩できる。テラスの一席で、フルーツケーキと淹れたての紅茶を嗜みながら景色を楽しむ
周りを眺めると、他の皆は全員料理を手にとっては口いっぱいに頬張り、ワイワイと盛り上がっている
作り置きしておいたものを適当にお皿に盛り付けてどんどん並べていった。ジャパリまんやカレーのような定番に、天ぷら、スパゲッティ、ピザ、うどんに蕎麦等。デザートにクッキーやアイス。勿論リクエストされたケーキも作った。これはそれを切り分けたものの一つだ
実況席では博士と助手がフルーツケーキをホールで食べていて、キングコブラさんはヘビグループの子達と近況報告。ジェーンさん達ぺぱぷはファンに囲まれて大変そうだけど嬉しそうだ
空を見れば、トリの子達がレースルートを飛んでいる。次は自分達も出るんだ!と今から意気込んでいるようだ。個人戦も視野に入れてもいいかもしれないね
「お疲れ様。今回は本当に頑張ったわね」
「キュウビ姉さんもお疲れ様。手伝ってくれてありがとね」
やはりというべきか、他のちほーの子達は料理を食べたことはなく、恐る恐る口にした。そこからは予想通り。その味に感動したのか次から次へと食べたので全然足りなくなった。なのでキュウビ姉さんとアルパカさんにも手伝ってもらって、料理をバンバン追加した
キングコブラさんとジェーンさんも、料理を運んでくれたり席を案内してくれたりした。おかげで料理に集中できたし良かった良かった
「あの人数であの減り具合は一人じゃ無理だしね。良かったわ、あなたからお願いしてきて」
「…まぁ、心配かけたくはなかったからね」
「そうね。あなた、平気そうな顔をしてるけど倒れそうになってたしね。自分が思っているより疲れているのよ」
料理をしている時に、何度か急激な眠気が襲ってきた。長く
「それ食べたら一旦休んできなさい。どうせ徹夜続きだったんでしょ?」
「そうだけど、まだ片付けしてないし」
「それくらいならやってあげるわよ?オイナリにも手伝わせるし。何より、これは私からのお礼だからね」
お礼…か。もう10年以上前のことだからね。きっと、二人も懐かしくて、楽しい思い出が甦ったんだろう
「…分かった。なら、お言葉に甘えるとするよ」
「ええ、ゆっくりお休み」
食べ終えた食器を片付けて、カフェの寝室に入りベッドに横たわる。柔らかい布団が俺の眠気を刺激する。これ直ぐにでも寝れるわ…
『みんなのリクエストにお答えして、今からミニライブやるわよー!』
\イヤッター!/\サスガダー!/\ペパプハカミ、ハッキリワカンダネ/
『早速いくわよ!大空ドリーマー!』
窓から外を覗くと、ぺぱぷのゲリラライブが始まっていた。本当にサービス精神旺盛な子達だ。そういうところもファンが多い理由の一つだろうね
だけどごめんね?この眠気には勝てなそうだ。勿体無いけど、今はおやすみなさい…
─
「キュウビキツネ、コウはどこに行ったんだ?」
「あの子ならカフェの寝室で休ませているわ。思った以上に疲れていた様子だったからね」
「やはりそうだったのか」
最近夜遅くまで作業をしていたようだからな。料理の作り置きに資料まとめ、会場の警備…。今日も朝から見回りにカメラマン役で忙しそうだった
「今なら誰もいないわよ。行ってきたらどう?」
「…いや、疲れているのだろう?迷惑にならないか?」
「大丈夫よ、あの子寂しがり屋だから、寝るまで一緒にいてあげて?それにあなただって話したいでしょう?」
「むっ…」
確かに、最近は準備で忙しくてあまりゆっくり話せなかったから、それくらいなら平気か
「…そうだな、少しだけ会ってくる」
「分かったわ。あっ、よかったら添い寝でもしてみない?『私が抱き枕になってやろう』って言ってあげて?」
「言うわけないだろう!?」
「あらら、それは残念。まぁ自由にしなさいな。じゃあまた後でね」
全く、相変わらずだなあいつは…。そんなことするわけがないだろうに…。だ、だがコウがどうしてもと言うのなら、やってもいいがな…
*
さて、目の前にあるのはコウがいる部屋のドア。一応ノックと声掛けをするが反応はなし。これは寝てしまったか?
「…入るぞ?」
なるべく音を出さないようにドアを開け閉め中に入る。ベッドには何もかけずに寝ているコウがいた。相変わらず無防備な寝顔だったが、どこか幸せそうな顔をしていた
「…お疲れ様、今日は楽しかったぞ」
抱えられて飛ぶのとはまた違った視点。あれが、お前がいつも見ている景色なんだな。それを少しでも共有できて嬉しかった。いつか私も、自分で空を飛んでみたいと思った
頭を撫でると顔が綻ぶが、どうやら熟睡しているようだ。物音を立てて起こしてしまうのも忍びないから戻るか…
ムンズッ
「…ん?」
「ヨルねえちゃん…」
夢を見ているのか?ヨル…は確か、コウの姉のヘビのフレンズだったか。夢の中でも尻尾をガッチリと掴んでいるのか離してくれなさそうだ
「いっしょに…いて…」
「寂しがり屋…か。仕方ない、少しだけだぞ?」
寝ながら尻尾を掴んだと思ったら抱き締めている。きっと、昔もこういうことをしていたのだろう
衝撃的な過去だった。だからこそ、こいつは私を敢えて遠ざけようとしていた。私を巻き込まないように。それが凄く嬉しくて、無理やりついていったのが凄く申し訳なかった。お前はやっぱり、凄く優しい奴なんだな
そんなお前に、私は出来ることをしたい。楽しい思い出を作ることが恩返しになるというのなら、私は喜んでしてやろう
「おっき~い…」ギュウ…
…しかし、結構くすぐったいのだな。だが民の願いを聞くのも王の務め。これくらいなら別にかまわn
「いただきま~す…」ハムッ
「うひゃあっ!?」
なっ…何をしているんだ!?尻尾を噛んだのか!?夢で一体何をしているんだこいつは!?
し、しかも今の声、私が出したのか!?なんか…凄く恥ずかしい!これは王としていけないことだ!威厳に関わる!
と、取りあえず一度離してもr
「おいひい~…」ハムハムッ
「あっ…!?まっ、まて…そんなにしたら…///」
こ、これは駄目だ…。体から…力が抜けていく…
「もっとたべる~…」ハムハムハムハムッ
「ひっ…///やっ…やめて…くれぇ…///」
─
「…んぅ?」
俺が握っているのは…ヘビの尻尾?しかもこれは見慣れたものだ。てことは…
「…起きたか」
やっぱり、キングコブラさんだ。なんでいるんだろう?後なんでこっち向いてくれないんだろう?
「おはよう…でいいか。どうしたの?」
「様子を見てきてくれと頼まれてな」
「ああ、そういうこと。よく眠れたからもうバッチリだよ」
「そうか、それは良かった。
「えっ?何か言った?」
「い、いや何でもない。先に戻ってるぞ?」
「…?分かった」
彼女は早足で部屋から出ていった。歩く時に尻尾を気にしていたような…気のせいか?
もしかして…寝ている間ずっと握ってたのか?そうだとしたらずっとここに居させてしまったことになるな…。後で謝罪を込めて何かしよう
さて…残っている作業、終わらせに行きましょうかね
─
覚えているわけないよな…。あいつは寝ぼけていただけだったのだから。あんなこと、起きている間にされたら…
「っ~~~~~~///」
あ…あんな醜態、見せられるわけがない…!見られるわけにはいかない…!私は、絶対にあんな…!
「どうしたの?立ち止まって」
「へあっ!?な、何でもない!さあ行くぞ!」
「う、うん。行こう」
ビックリした…。もう来るとは。何もなかったような顔をして……いや、こいつにとっては何もなかったでいいのだが…なんかモヤモヤする
「そうだ、何かしてほしいことある?俺ずっと尻尾握ってたんでしょ?それであそこに留まらせちゃったみたいだし」
それ以上のことをされたんだが?…とは言えない。恥ずかしいし、気まずくなるのは御免だ
だがそう言ってくれたんだ。折角だから利用させてもらおう。それにあんなことをされたんだ、多少の嘘は許されるはずだ
「そうだな…考えておく」
何をしてもらおうか考えながら、私達は最後の作業をするために、皆の元へ戻るのだった
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