第77話 雪山雪かき雪遊び
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『うへ~…寒いですね~…。コートあって良かった~』
「コートあってもその格好じゃ寒いですよ、師匠。なんで下いつものチャイナ服なんですか…」
『つい着てしまったんです。…あ~あ、門番も楽じゃないですね~』
「寝てること多いんですから眠気が覚めていいじゃないですか。怒られるよりマシかと」
『なんかメイド長に似てきてますね…。そうだ!』
「…な~んか嫌な予感が…」
『コウ、これも修行です。
「それ師匠が楽したいだけですよね!?これはパワハラとしてお嬢様に報告させていただきます!」
──その必要はないわ
『「お嬢様!?なぜここに!?」』
──私もそれを提案しに来たの。といっても、二人で勝負してもらうわ。どちらが多く雪を退かせられるかのね
「また妙なことを…」
──あっ、負けたら罰ゲームあるから。精々頑張りなさい
『「うおおおおおお!負けるかあああ!!!」』
『これで直ぐにでも終わるわね。紅茶でも飲もーっと。フフフ♪』
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雪山にいるからって、これまた懐かしいものが夢に…。皆は元気だろうか。きっと今もお嬢様のワガママに振り回されているのだろうな
しかし眠い…。昨日のせいだ。これは仕方ないんだ。昨日(?)の騒動も無事に解決したけど、その後も色々あったのだ
ペパプの皆と再会して挨拶をしたり、雪山であったことを聞かれたり、大勢で温泉に入っていくのを見送ったり、他のメンバーに俺の超絶テトリステクニックを見せつけたり…
「でもこっちのゲームはダメなんだね~」
…フルルさんからの何気ない一言で、大ダメージを受けたり。お陰で夜遅くまで起きていたから眠気が強いんだ
そういえば、午後から雪かきをするって言ってたっけ。今何時くらいなんだろ?時計時計…っと
「えっと…8時くらいか。…もう少し寝よ」
二度寝…なんて素敵な響きなんでしょう。お休み…
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──雪だ雪だー!ひゃっほー!
━━はしゃぎすぎだ、リル。コウ、寒くないか?
「だいじょうぶ。これあったかい」
──モコモコだもんね!でもくっつくともっとあったかいよー!ほらギューッ!
「リ、リルねえちゃん…くるしい…」
━━なにやってるんだお前は。ほらこっちに来い。あれはほっといて一緒に雪だるまを作ろうか
「…そうだね。おっきいのがいい」
──ちょっと!?コウまで無視しないで!?お姉ちゃん泣いちゃうよ!?
「…じょうだん。リルねえちゃんはいちばんうえ、ヨルねえちゃんはした。ボクがまんなかね」
──よし!気合い入れて作るよー!それ終わったらかまくら作ろうね!
「かまくら…!つくる…!」
━━分かった分かった、滑るからゆっくり行くぞ
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…また懐かしい思い出が。なんで夢でニアミスしてるの?確かに彼女に雪で何か作ろうとは言ったけどさ。忘れてないから安心してよ、姉さん?
…まぁ、久しぶりに会えた気がして、嬉しかったけどね
さて、今は何時くらいだろう?
「もうすぐ12時か…。三度寝できるな…」
三度寝…なんて素晴らしいひびk
「おはよう、コウ」
…二度あることは、三度なかった
「おはようございます、キュウビキツネさん。なんで俺の部屋に?」
「お昼が出来たから呼びに来たんだけど…。もう少し寝てる?」
「いえ頂きます。…あの、着替えますので」
「あらあらはいはい。思春期真っ盛りね~♪」
何言ってんだこの妖怪。はよ出てけ
「あっ、私じゃなくて、
「何言ってんの本当に!?後から行くから戻ってて下さい!」
一気に目覚めたわ!そこはありがたいけどそういうのやめろや!
*
さて、お昼も食べて今は宿の玄関前。お昼は焼きそばでした。美味しいよね焼きそば
ここに泊まっていたフレンズの殆どがいるな。いないのはヤタガラスさんとハシブトガラスさんとヤマタノオロチさん。昨日に引き続きパトロールに行ったみたいだ。カピバラさんは…宿内の掃除だそうだ
「今日は随分と寝てましたね」
「三度寝しようとしてたのよ?」
「三度寝…貴方…」
「未遂なのでセーフです」
ぶっちゃけなくていいんですよそんなことは。ほらオイナリサマが直ぐに俺に厳しめの眼を向けてきたよ。俺が何したって言うんだ。もっと優しくしてくれないと伸びないですよ?
「雪かきの班を決めたから、早速別れてちょうだい。皆よろしくね?」
流石ギンギツネさん手際がいい。まずキツネ四人。俺とキングコブラさんとジェーンさん。ペパプとマーゲイさん。終わったら各々で別の場所を手伝う形だ
…ちょっと待て
「なんでこの組み合わせ?」
「私達は広い範囲をやるから四人。ペパプ達はその毛皮だと大変だから五人。貴方達が三人なのは、貴方がいるからよ?」
「俺?」
「男の子でしょ?頑張りなさい?」
「…分かりました」
最もな理由がある以上、納得するしかない。メンバーがこの二人なのは、偶然じゃないだろうけど
*
所定の場所についたのはいいんだけど…今俺は無性に走り回りたいのを我慢している。何故なら今日は
「じゃあやっていこうか。スコップの使い方は大丈夫?」
こういう時は意識を他に向けるのが一番。自然に体を動かして発散しましょうか
「さっき習ったからな。大丈夫だ」
午前中に学んだのか、早速積もった雪をざっくざっくと避けていくキングコブラさん。鍛えているだけあって端の方にどんどん積んでいく。ペース配分はした方がいいかもよ~?
「私も、使い方は大丈夫…なんですけど…」
一方ジェーンさんは、雪にスコップを突き刺した後の、持ち上げるという動作が苦手なようだ。力の入れ方がよく分からないのかもしれない
「えっとね、こうやって持ってから」
「こう…ですか?あれ?上手く出来ない…」
「ん~とね…ちょっとごめんね?」
「えっ?」
「こうやって、こう!」
見ても分かりづらいなら、一緒にやってみた方がいい。ということで、彼女の手を握り、一緒に持ち上げる。で、そのまま一緒に端にポイッ!
「こんな感じ。なんとなく分かった?」
「…ごめんなさい、もう一度…いえ、慣れるまでいいですか?」
待って一回だけならと思ってやったからそれは予想外。これでも緊張はしてるんよ?現に君も顔赤いし…。いやこれ寒いからか?なら俺の顔が赤くても問題ない、だって寒さが理由だから
だが自分から始めたこと、断るのも申し訳ない。ということで…
「いいよ、じゃあここら辺を退かすまでやってみようか」
「はい!お願いします!」
二人でざっくざっくと雪を掻き分けていく。初めての共同作業?資料集めしたので初めてではないです
ザッザッザッザッ!
…キングコブラさんのスピードが上がった。何がトリガーになったのだろうか?そして何故か視線が痛い。蛇に睨まれた蛙…そこまでじゃないけど
それにしても、彼女にペンの持ち方を教えた時もこんな感じだったっけ。そこから暫くしてジェーンさんにもあったんだよね。もう随分昔のことに思えてしまうなぁ…
*
「どう?コツは掴めた?」
「バッチリです!ありがとうございました!」
なら良かった。解放された…と言うのは彼女に失礼だ。だけど密着できて良かった…と思うのもなんか違う。いや俺はそんなこと考えてない。断じてない
そしてキングコブラさんのペースも落ちた。まぁあれだけのスピードでやればね…
いつもより3倍くらいの速さで動いていた…気がした。そう、『即行で終わらせてやる』という鉄の意志と鋼の強さを感じた
「キングコブラさん、休んでていいです…いいよ」
「フフッ…」
「いやしょうがないじゃんか…」
「いや、すまない。少しずつでいいぞ?」
なら笑わないでよ…。長く敬語だったせいで切り替えが難しい。彼女が言った通り、よそよそしさはなくなった…気がする。それはいいことではある…よな?
二人には休憩しててもらって、その間に粗方終わらせてしまおう。水筒の紅茶を渡してスコップを構える
「私は一人でやってた訳じゃないのでお手伝いしますね」
「そう?なら少しずつでいいから。疲れたら休んでね?」
「それはコウさんもですよ?」
「分かってるって。二人して心配性なんだから」
(過去を振り返っても同じ事が言えますか?)
(よくそんなことを言えるものだな…)
あっ、なんか二人の言いたいことが分かってしまった。俺にも読心術が使えるようになりましたよ先生!でも何か突き刺さるので読むのやめます!
*
「…ふぅ、こんなもんかな?」
庭の隅には山盛りの雪、地面には少し残った雪。正直えぐい量。雪国の人は大変だな…。俺の住んでた地域はそこまでじゃなかったし。もう片方は異変で季節外れの雪降ったりしたけど
ちょこちょこ休憩を挟んだからか、二人はまだ動けそうな感じだ。なら、あれが実行できるな
「さて、雪ならではの遊びをしようと思います!」
「「雪ならではの?」」
「そう!先ずはね…」
手のひらで小さな雪玉を作り、その雪玉を地面の雪の上でコロコロと転がす。上手く雪がついてくれているおかげで、どんどん雪玉が大きくなっていく
「ほう…結構大きくなるのだな」
「しかし、これだけなのでしょうか?」
いい食い付き方をしてくれるぜ。チッチッチ…と指を振り、もう一つ小さな雪玉を作る。そして、それを大きい方に乗せ、石や小枝を刺せば…
「はい、これが『雪だるま』だよ!」
「「おお~…!」」
俺が作ったのはオーソドックスなもの。だったけど二人にとっては馴染みのない代物。興味津々だ
「早速やってみようか。最初は小さいものから。で、段々大きく…」
コロコロと、俺の真似をして雪玉を転がしていく二人
「これはおもしろいな。転がしただけ大きくなるぞ!」
「大きいのもいいですが、これくらいの方が私は好きですね」
対照的なのがまた面白い。キングコブラさんは自分と同じくらいのを、ジェーンさんは腰より少し下辺りまでのを作った。どちらも初めてなのにとても上手い。俺のも一緒に並べると家族みたいだ
…家族、か
「こう見るとバラバラだな」
「でも可愛いのが作れましたね!」
「そうだね。じゃあ、次はかまくらだ!」
端に寄せた雪をドーム状に固めていく。固めて、固めて、中をくりぬく。崩れないか心配だったけど何とか上手くいった。過去の経験は役に立つ。ありがとう姉さん達
でもこれ、あの二人は吹雪の中あの薄着で立派なのを雪だけで作ったんだよね。やっぱすげえや
「これが『かまくら』か!雪で家が作れるとは!」
「意外とあったかいんですね。不思議…」
「雪で出来てるのにね。面白いもんだよ」
本格的なものだと水をかけたり、枝を使ったりして大きなものを作るらしいけど、それは後々でいいかな。その分小さいものになっちゃったけど…二人が楽しそうなのでそこはOK!
「あれ?コウさんは入らないんですか?」
「いや…それは…」
首をかしげないで?昨日のことにさっきのことで狭い空間だと何か気まずいんだよ。なので二人で堪能してて…
「いいからこい。ほら」グイグイ
「遠慮せずに来て下さい」グイグイ
「ちょっ、分かったから引っ張らないで!?」
仕方ないので中に入る…と、何か落ち着いた。さっきまでの気持ちは何処へやら。狭い所は落ち着く。キメラってそういう獣じゃないはずなんだが…
だけど、皆でボーッとする時間も悪くない。このまま時間が過ぎるのを待っても…
ジリ…ジリ…
「…このままだと寝ちゃいそうだから出るね」
「…分かりました」
「…分かった」
二人が少しずつ近づいてきたので理由をつけて外に出る。きっと狙いは…
「「もう少しだったのになぁ…」」ボソッ
案の定、俺の尻尾と耳だ。視線がそこに突き刺さる。そんなガン見しても触らせないからね?
そこからは三人でラッキーさん型の雪だるまを作ったり、かまくらをキツネ型にしたり、俺が雪ウサギを作ったり…
皆で上手に作れた時の達成感と満足感は病み付きになるね。楽しくて時間なんてあっという間に過ぎていく。俺達はギンギツネさんが様子を見に来るまで、雪だるまを量産しまくったのだった
*
「皆お疲れ様。ありがとう、助かったわ」
皆ヘトヘトなのが分かる。…いや、澄ました顔が二人。流石伝説種、タフだ
「では夕食の準備でもしましょうか。今日は私が作りますね」
おお、オイナリサマの料理だ。久しく食べてないから何を出してくれるのか楽しみだなぁ
「コウ、手伝ってくれませんか?」
「えぇ…」
「冗談ですよ、ゆっくり休んでくださいね?」
冗談に聞こえなかったのは気のせいだと思いたい。今日は疲れたけど、久しぶりに子供のようにはしゃいだ後のご飯は凄く美味しかった。天ぷら蕎麦…麺類は好きだから連続でもボク満足!
皆が温泉に入った後で、俺も温泉に入らせてもらった。もちろん一人でですよ?混浴なんてもってのほか。
寝る部屋ももちろん一人部屋。添い寝なんてさせないししません。君のことだぞ勾玉よ
お世話になりっぱなしもなんだし、明日は早く起きて朝御飯を作ろう。それがいい、きっと、皆喜んでくれるはずだからね
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