幻想獣と自由な少女②


前回のあらすじ!


『リン』と名乗る少女は、自分の世界へと招いた少年、『コウ』と感動の再会を果たす。壮絶な葛藤をしつつも覚悟を決め、世界を渡るという過酷な行為をしてまで会いに来た少女に、少年は胸打たれ感動し──











「いやしてないしてない。何捏造してんの。てかあらすじって。物語じゃないんだから」


「えぇ~?そこは抱きついて涙を流す場面でしょ?会いたかったー♪会いたかったー♪会いたかったー♪」


「NO。しかも若干ゃ古いし」


バッサリである。情けもあったものじゃない。因みにチョイスが古いのは作者がここ好き!という訳ではなく単に頭に思い浮かんだからである


「じゃあこっち?君の前々前世から僕は~」


「捜し始めてないしそれも古い(…よな?)。そんなことやってていいの?目的があって来たんでしょ?態々隙間を通ってさ」


本題を出さない態度に呆れ、こちらから話題を出すが、少女は周りを見渡すだけ


なぜなら、セルリアンが周りにいっぱいいるからである。イッパイイルー!?


「…さっきまでいなかったんだけど」


「あっ、その隙間から出てきたっぽい」


「オイイィィィィィ!?!?速く閉じて!」


「しょうがにゃいなあ~、そうれぃ!」


少女がパンッ!と合わせ手を地面につけると、地面から飛び出したワイヤーが入口を封鎖する。鋼線の錬金術師の誕生である。因みに手を合わせたりつけたりする意味はない。映像インスタ映えを考慮した結果です


そこを通ろうとしたセルリアンは切り刻まれ十七分割され砕けてしまった。石も割れているので復活して感情を持つこともなし。関係ないけどリメイクはよしろ


「ナイスワイヤー!(う~わえっぐ…)」


「建前と本音逆になってない?」


「どっちも本音だからセーフ。それよりちゃっちゃと片付よう!」ブゥン!


「任せて!」ブゥン!


コウはいつもの剣ではなく、右手に鎚を作りセルリアンを叩いていく。雑魚を相手に練習するが、あまり上手くいかず鎚は直ぐに砕けてしまう


対してリンの方は、両腕を広げ、両手にダガーナイフを創り出す。軽そうながらも威力が高そうなそれで敵を切りつけ…



「ホイッ!」ブンッ!



グサッ!パカァーン!



…訂正いたします。投げつけ、石を壊しました。失礼いたしました


「近距離攻撃じゃないの!?」


「今日の私はアーチャーの気分なんだ」


「だったら尚更剣だして戦って!」


弓兵アーチャーなのに剣士セイバーの戦い方しろとかこれもうわかんねぇな。しぶしぶ従いながら石を残しつつ敵を倒していくのだった。取り出した石は全て砕けたので無駄でした。残念!



*



「そうだ、君の名は?」

「映画良かったなぁ」

「いや、そうじゃなくてね?」

「えっ?…ああ、俺は『コウ』だよ。そういえば名乗ってなかったね」


天然ボケをかましたところでやっと本題である。自己紹介までが長かったが気にしてはいけない(戒め)


「…ん?名乗ってないのにあらすじでコウって…」


「気にしない気にしない」


「…まぁ、いいか。それで?」


「どうやら私の世界から、パークの危機に関する何かが君の世界に紛れ込んだみたいなんだよね」


「え?なにそれ怖い」


いきなり突拍子もない事を言われ、返答が適当になる。気になることは多いがとりあえず進めていく


「どのタイミングで?」


「多分アノンちゃんに会ってからかな。あの可愛い小夜啼鳥サヨナキドリのフレンズなんだけど」


「…もしかして、あの時か…?」


トリのフレンズと広場に向かう際に感じた気配。少女の言葉と照らし合わせ納得する。それを分かった上で少女はその話題を出さず違う事を話す


「深く考え込んじゃってどうしたの?あっ、もしかして私に惚れちゃったとか~?」ニヤニヤ

「ハッ(冷笑)」

「ア゛?(怒)」

「ごめんなさい」

「超許す」


一瞬だけだが本気で怒らせたので瞬時に謝る。即許してくれるリンちゃんマジ天使。惚れちゃってもいいんだぜ?


「で、それを倒すのに君にも手伝ってほしいんだよね」


「俺も?捜すだけじゃダメなの?」


「ちょっと面倒な感じなんだよね。それにこっちだと全力が出せないみたいだからさ」


と言いつつも大体何とかなりそうな力は残っている。どこまで本気なのかよく分からないのである



「コウ?そこにいるのですか?」



二人にとって聞き覚えのある声がした。楽しそうな顔をしたリンと対照的に、とてつもなく嫌そうな顔をしたコウ。理由は簡単、隣にいるフリーダムガールの説明をどうしたらいいかよく分からないからだ


「ろっじにいないと思ったらここにいたのですね。飛び出していったとタイリクオオカミから聞きました。フィルターに何かありまし……………誰ですか?」


「えっと…(そうだ!)俺のスタ○ドです!」


ス○ンド:『タダノ・フリーダム・リン』


破壊力:?

スピード:?

射程距離:?

持続力:?

精密機動性:?

成長性:?

スリーサイズ・身長・体重:ひ・み・つ♥️


能力:多分色々出来る程度の能力


※完全自立型なので制御は出来ません


殆ど謎である。振り幅が広すぎて定まらないのかもしれない


「いや~まさかサンドスターで○タンド能力が発現するとh」

「今ならまだ冗談として受け取りますがどうしますか?」←弾幕を放つ構え

「ごめんなさい冗談です」


秒でバレた。当たり前である。隣でリンがノリノリでジョジョ立ちをしてくれたというのに。どのポーズかはご想像にお任せします



*



「かくかくヘラジカまるまるもりもりでみんなたべるんだよ」

「すみません、意味が分かりません」

「つまりですね」



異世界に招かれた

その瞬間危険なものがこっちにきた

「私が来た」ドンッ!



「ドンッ!じゃないよ、すっとばさないで」


顔の影を濃くして割って入る。進まないので少し大人しくしていて下さい←いいだろう


「では、悪い存在ではないのですね?」


「失礼な、パークの危機を何度も救ってきたんだよ?オイナリサマちゃん」


「"サマ"をつけたら"ちゃん"は要りません」


「そういうことだから、暫くこの子借りるね、オイナリちゃん」


((ちゃんが残った…))


ちゃん付けは譲らないしデフォルトだしリルもしていたので問題なし。苦労人且ついじられキャラになってしまったオイナリサマ。どうしてこんなことに…


「…まぁいいでしょう。コウ、これも守護けものへの修行だと思いなさい」


「うへぇ…分かりました…」


「よろしい。では私は帰りますね」ピューン!


「えっ!?ちょ、ちょっと…!」


オイナリサマは逃げるように雪山に戻っていった。協力してくれる気はないらしい。だが彼女はこの先まだ出番あるので逃げられません(ネタバレ)


「よろしくね、コウちゃん?」

「ちゃんやめて」

「ごめん無理」

「えぇ…」


ちゃん付けは譲らない(大切なことなので二回言いました)。神でも仏でもあばれる君でもスギちゃんでも譲らないのだ


粘っても嫌がってもやめてくれないので、この問題に対してそのうちコウは考えるのをやめた


さて、ここにいるのはコウという少年とリンという少女。男女二人仲良く山の中。何も起きないはずはなく──


「そういうのいいから」


「ノリ悪いと女の子にモテないよ?」


「今回の事と関係ないでしょそれ!?あーもういいから行くよ!」




*




只今バイクに乗って遊園地へ走行中。なぜ遊園地かというと、おかしなことになったのはここが原因だから!という少女の勘である。本当なのかは分からないがとりあえず動かないことには始まらないので走っている


ブースターなんてなかったので特にスピードは変わらない。安全運転第一、煽り運転死すべき慈悲はない


「…で、君は何のフレンズなの?」

狩猟豹チーターだよ」

「嘘つけぇ!」

「ある意味正解なんだけどね。当てたら景品あげる」


先程までのやり取りから考える。肩まで伸ばしたストレートな黒髪。顔立ちは整っていて獣耳も尻尾もない。ここまで見ればヒトでも問題はない


だが少年が見た少女の力は、ヒトというには強すぎる。そして、少し青みががっていて、澄んでいるのにもかかわらず奥まで見透す事ができない瞳が、ヒトではないと彼に訴えている…気がする


Aアンサー:全然わからん!


「…指輪リングしてるからリン…てことだけは」


「おっ、当たり。君の方こそ何のフレンズ?この前は犬耳出てたけど今はない。ただのイヌ科のフレンズってわけじゃないよね?」


髪の毛をさわさわしながら質問をする


「ちょっと運転中に何してんの。危ないからやめなさい。いい子だから」

「でもモフモフしなきゃ(使命感)」

「そんなことしても出てこないから」

「ん~…。なんでだろ?」

(…確かに?)


何やら意味深なことを言っているが、その間にも触ることを止めることはない。そして妙に触り方が上手い。きっと常日頃からしているに違いない。犠牲者は大変な苦労人なのだろう。ドンマイ



*



道中特に問題なく遊園地へ到着する。最近戦いが続いているのでたまにはいいでしょう


「デートしない?」

「何の為にここに来たのか30字以内で簡潔に述べろ」

「倒すのも大切だけど折角だから友好を深めようよ?」


書くと22字。発音で丁度30字。唐突すぎるお誘いに無茶ぶりで返しそれに答える。さすがリンさん。さすリン


目的はあるが目的地はないのでふらふら歩いていく。ジェットコースター、観覧車、カート、etc…etc…


現実でも夢でも通ったルートを、少し先を行く少女は楽しそうに歩いていく。まるで、そこを通ったのを知っているかのようにズンズン進む


「ほらほら、デートっぽいでしょ?」


「置いていかれてるんですがそれは」


「あははは♪捕まえてごらんなさ~い♪」


「やってやらぁ!」


気合いを入れ、全速力で獲物リンの元へ駆ける。けっこう呑気してたリンもコウが一瞬本気で怒っている様に見えるほどの迫力にはビビった!!いや実際本気なんですけどね


その二人の間に生じるラブコメなど生まれる余地もない圧倒的殺伐空間はまさにサンドスターの小宇宙!!なんかもう何言ってるのか分かんない人は狩りごっこ(ガチ)が始まったという認識でOKです


しかし只でやられるリンではない。掌にサンドスターの輝きを集め、ボールのような物を作り出す。そして、大きく振りかぶってコウ目掛けて投げつける。見事なトルネード投法であった


時速150kmは出ているであろうそれをコウは弾き返すが──



カッッッッ!!!



「うおっまぶし!」


「強大なモンスターには必需品だからね!」


閃光玉目眩ましである。使う毎に効果の持続時間が少なくなるが初撃は十分。その隙に距離を取ろうとするが…


「逃がさん…お前だけは…!」


執念が足りていたのか、眼を瞑りながらも的確に追いかけてくるコウ。どこぞのラスボスみたいな台詞とドスの効いた声で呟く彼に、少しやり過ぎたかもしれないと反省する少女であった




*




「はい、ジャパリまん」

「一つじゃ足りない。もう二つ」

「太るよ?」

「今俺のエネルギーは走り回った結果マイナス。そこを埋めるためのジャパリまん。よってプラマイゼロカロリーはゼロで太らない」

「なるほど、納得したよ」


謎のカロリーゼロ理論。しかしこれは中々上手いこと言えたのではないだろうか?えっ?上手くない?まだまだ修行が足りないということか…



さて、走り回っていたら売店に着いたね。今はお互い休憩中。少しやり過ぎたからちゃんと謝ったよ?この子も許してくれたからこの話はこれで終わり!


お店に置いてある猫耳カチューシャをつけたんだけど、コウちゃんは何のリアクションもしてくれなかったよ。こんな可愛い女の子が『にゃあ♪』ってしたのにさ。これがだったら襲われてるんだけどなぁ


えっ?ナレーションが変わったって?だって今は私がしてるからね。メタい?アーアーキコエナーイ



「…ねぇ、あれなんだと思う?」



おっと、会話になるから一旦やめるよ!



コウが指差した先には、遊園地によくあるパンダの乗り物。これは小さい子に大人気の乗り物であり、正式名称は『メロディペット』と言うらしい。名前になるほど音楽が流れてた記憶ないです


それに跨がっているのは、小学生くらいの女の子…に見えるセルリアン…に見える何か。はしゃいでる姿は年相応なのだが、纏う雰囲気は何処かおかしかった


「…もしかして」


「そうだね、


あんな小さなものが?とコウは思ったが、リンがここにいる時点で何があってもおかしくはない。もしかしたらとてつもない何かを秘めている可能性だってある


不気味に笑うそれに気づかれることなく後ろに回る二人。そして分かったことがある


「…隙だらけじゃない?」


「そうだね、でも厄介なんだよ?」


「そーなのかー(適当)。で、どうするの?」


「こうするよ!」


リンが弓矢を創り、一瞬の内に射ち抜く。動いていないなら百発百中、ごり押しなんて必要ない。矢は女の子(?)の左胸を貫通し──




ブワァッッッ!!!




──そこから、闇が噴き出し辺りを包んだ




「なっなんだこれ!?」


視界が一時的に奪われる。敵を見失い焦るコウ


「コウちゃん!こっちだよ!」


リンがコウの腕をグイッと引っ張ると、彼のいた場所の地面が抉れ無くなった。ガオンッ!と中々にえげつない音がした攻撃に、彼は久々に命の危険を感じた


だがその攻撃は一度だけ。闇が晴れると、そこには先程の女の子はいなくなっていた。他に敵の気配も音も聞こえない


「今のは…?」


「あれの体の中に、わりとえげつない物が押し込まれていたんだ。それが今ので噴き出して少し消えたって感じかな。因みにあのまま放っておけば、内側でどんどん大きくなって手がつけられなくなってたね」


余計なことをしたんじゃないか?という疑問を先に潰しておくスタイル。実際彼は言いかけたので効果はあった。それに彼は納得し周りを確認する


「…さっき、ここが抉れたはずだよね?だけど元に戻ってる。なんでだと思う?」


「私にも分かんないかなぁ…。…ん?」


「どうしたの?」


「それ、いつの間に出てたの?」


それ?と言われ首を傾げると、リンはコウに近づき頭を撫でる。正確には、を触っていた


空にピンッ!と立っている耳と、腰辺りから生えている、三本の尻尾。ゆらゆらと揺れているそれはボリュームがある


「…なんで、今…?」


そう、彼の中にあるキュウビキツネの力が、けものプラズムとして出現していた。意識して出した訳ではないそれに、リンはおろかコウ本人でさえ驚いている


「…この際これは後回しだ。リンさん、とりあえず周りを確認し──」



「リン?そこにいるのですか?」



「──えっ?」



彼の耳に入ってきたのは、落ち着いた女性の声。彼は、その声を知っている



「一緒にいるのはキュウビキツネ?何故貴女がここに──」



そして、次の発言は彼にとってあり得ないことだった。何故なら、彼はその人に何度も会い、お世話になっているからだ



「…オイナリ、サマ…?」


「──貴方、私を知っているのですか?」



この出会いと言葉が意味することはただ一つ



少年は、再び異世界リンのせかいに移動した

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