Darsan様からのリクエスト「激突符MM(マスター・モンスターズ)」のゲームシーン

Darsan様のリクエストで、「激突符MM(マスター・モンスターズ)」のモンスターが動いて戦うシーンを書きました!

↓作品URL↓

https://kakuyomu.jp/works/1177354054887197139


それでは、どうぞ!


 ~~~~~


 この世界では、『激突符MMマスター・モンスターズ』と名付けられたカードゲームが、知らぬものはいないと言われる程に世界的大流行している。


 物語の主人公である、〝神鳴じんめい漓流りる〟が通う学校でも、それは例外ではなかった。


 那騎袖中学校の教室の一つで、今日も漓流は友人達とMMで対戦を繰り返しこなしていた。


「おーい、漓流~。今度は私とMMやらない?」

「うん、いいよ。策夜さくやちゃん」


 友人の一人である策夜の誘いに乗った漓流は、早速始めようとMM専用のプレイマットを机の上に広げ、使い古されたグローブを両手にはめる。


「漓流、まだそのプレイマットとグローブ持ってるのかよ。そろそろ買い替えたら?」

「ダーメ! お兄ちゃんから貰った大切な物だから、私にとってはいつまでも新品なの!」


(そうだよね、龍成お兄ちゃん♥)


 漓流が大好きな兄からの貰い物を眺めて感慨に耽っている内に、ゲームの準備が整った。


 コイントスで先行か後行を決め、漓流が先行、策夜が後行となった。


「さて、始めますか」

「待って、あの掛け声をやらないと」

「え~、野良試合なら別に良くない?」

「いいから、『アー、ユー、レディ?』」

「「『バトル、ゴーッ!!』」」


 ゲーム開始の声が二人によって齎され、先行の漓流が行動を開始する。


「私のターン、ドローはなしで。私は経費場コストフィールドにカードを置いて、1コストで、戦場モンスターフィールドに『水龍の雛』を召喚ポゼッション!」


 漓流がそう宣言しながら1枚のカードを置くと、カードから水色のトカゲの幼生が現れる。


 MMでは、プレイマットがカードを読み込んで、立体映像でモンスターが実在するかのような臨場感を演出されるのだ。


「『水龍の雛』の能力でデッキから一枚ドロー、からのエンド」


 召喚されたばかりの『水龍の雛』が〝クァッ〟と鳴くと、漓流のデッキ山札の一番上の1枚が淡い光を放つようになる。


 『水龍の雛』は戦闘能力こそ低いものの、カードを1枚ドロー出来るという地味ながらも手数の補充に繋がる、戦略において欠かせないモンスターである。


 漓流は『水龍の雛』の能力で光ったカードを引き、自身のターン終了を宣言する。


「私のターン、ドロー」


 そうして漓流のターンが終わったのなら、次は策夜のターンとなる。


 先行の漓流と違い最初のドローを選択した策夜は、自身のデッキの山札から1枚のカードを引く。


「私も、経費場コストフィールドにカードを置いて、1コストで、戦場モンスターフィールドに『策略の兵士』を召喚」


 策夜の宣言に呼応するように、『水龍の雛』と対峙する形で片手剣を持ち、鎧に身を包んだ人形のモンスターが現れる。


「そして、『策略の兵士』をタップして攻撃して『水龍の雛』を破壊!」


 策夜の指示を受けた『策略の兵士』は〝うおおおおっ〟と雄叫びを上げながら、漓流の『水龍の雛』へと剣で斬りかかる。


 漓流の『水龍の雛』は避ける素振りも見せずに、『策略の兵士』の一撃で切り捨てられる。


 『水龍の雛』は後ろに仰け反り、パァンッと破裂したかのように無数のホリゴンライトとなって消滅する。


 ステータス上では、『策略の兵士』の方が『水龍の雛』より攻撃力が高いため、逆であれば返り討ちは可能であった。


 早速召喚したモンスターを倒されたことで、漓流を守るものはなく、策夜は再度宣言する。


「『策略の兵士』の能力で、もう一度攻撃!」


 『策略の兵士』の能力である、二回の攻撃宣言可能を発動させて下した命令に従って、『策略の兵士』は〝はああああっ〟と勇ましい声を上げながら、手に持った片手剣で漓流へと斬りかかる。


「──っ!」


【漓流LP6→5】


 もちろん、相手はホログラムであるため、漓流のいくら剣で斬られようとも、漓流の体には傷一つ負わせることは出来ない。


 しかし、MMのルールで設定されているLPは1だけ減らされてしまう。


 このままLPがゼロになってしまうと、漓流の敗北となり、まだ一度も攻撃を受けていない策夜の方が有利に思える。


 だが、漓流の表情に焦りはない。

 むしろ待ってましたと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべる。


「『水龍の雛』が破壊された時、もう一つの能力を発動する! 手札から3コスト以下の『水龍』と名のついたカードを戦場モンスターフィールドに出す。来て、『清水龍ーミラガナ』!」


 漓流が『水龍の雛』の抜けた穴を埋めるかのように、今度は青と水色が入り交じった美しい鱗を持つ二メートルのオオヘビのような体躯の水龍を召喚する。


 そう、低い戦闘能力と引き換えに備わっている『水龍の雛』の能力により、より強力なモンスターを呼び出す足掛かりとして、漓流にとってはむしろ多少のダメージは好都合なのである。


「うげぇ、相変わらず『水龍の雛』の能力はエグいなぁ……ターンエンド」


 策夜が嫉妬と羨望の視線を向けるも、漓流はどこ吹く風というように、ターン終了を宣言する。


 そうして、二度目の漓流のターンがやって来た。


「私のターン、ドロー……さ~て、いきますか! まずは『ミラガナ』を経費場コストフィールドへ移して2コストにして、『ミラガナ』は自壊!」


 『清水龍─ミラガナ』が雄叫びを上げると、その体はキラキラと光の粒子へと変わっていく。


 さらに漓流は続ける。


「『ミラガナ』の能力発動! 次に召喚する『水龍』の召喚コストを3少なくする! 軽くなったコストで召喚!」

「はあっ!? アンタ、まさか……っ!?」


 漓流が何を召喚しようとしているのかを察した策夜は、驚愕を隠せないでいる。


 そんな策夜に対する返答は微笑みでもって返し、漓流は宣言する。


 ──自らの切り札を。


「来て! レジェンドカード『海瀑水龍ーリヴァイアサン』!」


 漓流が戦場モンスターフィールドに1枚のカードを置くと、プレイマットからドッと激しい水柱が立ち上る。


 その水柱の中に細長いシルエットが映し出されるや否や、水柱は消し飛び、そこから一体のモンスターが姿を現す。


 それは、流麗という他ない美しい龍だった。

 全長四メートルの細長い体躯を包む青白い碧色の鱗は、光を反射して煌めいており、胴体を浮かせる白鳥のような翼がバサリと羽ばたき、頭部付近にある両腕にある虹色のヒレが、水龍の美しさに拍車を掛ける。


 これが、漓流の手持ちのモンスターの中で最も強力なモンスターであり、彼女の切り札でもある『海瀑水龍ーリヴァイアサン』。


 その召喚成功に歓喜する間もなく、漓流は宣言する。


「『リヴァイアサン』の能力発動、『雨術うじゅつ』の呪文スペルカードをノーコストで発動できる。次に私が使用するのは、『雨術ー篠突く雨』。このカードは、戦場のカードを一枚破壊し、デッキからカードを一枚引く。そして引いたカードがモンスターならライフを一枚削る。呪文、道具アイテムなら、自分のコストカードを一枚デッキに戻す。いくよ……」


 この一枚で、この対決の勝敗が決まるため、自然と両者の手の平に、手汗が滲む。


 ──さて、どっちだ?


 こればかりは、漓流も策夜も誰も予測出来ない。


「私が引いたカードは……」


 ──ゴクッ。


 誰かが生唾を飲み込む。

 それほどの緊張感が場を支配する中、漓流はゆっくりとカードを広げる……。


「──『水龍ーミナモ』! よってライフを一枚削る!」

「くっ……!」


【策夜LP6→5】


「そして、『リヴァイアサン』で攻撃!!」


 漓流の指示に合わせて、『リヴァイアサン』が空気を揺らす程の咆哮を上げる。


 そして『リヴァイアサン』はぐるりと宙返りを披露すると、地面から膨大な量の水流を発生させる。


〝グアァァァァァァァァッッ!!〟


 その大津波とも形容すべき圧倒的な水流によって、策夜はあっという間に呑まれる。


【策夜LP5→1】


「っ、まだ──」

「『リヴァイアサン』は攻撃するときに、墓地の『雨術』のカードを手札に戻し、墓地に存在する、『水龍』カードを戦場に出す。来て、『水龍ーミラガナ』!」

「げっ!?」


 なんとも反則を疑いたくなるような『リヴァイアサン』の能力により、リュウグウノツカイのような髭とタテヒレを持つ水龍が召喚される。


「『ミラガナ』でトドメ!」


 続け様に放たれた攻撃宣言に従って、『ミラガナ』は水のブレスを放つ。

 手札にそう都合よく回避出来るカードがあるはずもなく、策夜は為す術もなく受けるしかなかった。


【策夜LP1→0、Win神鳴漓流】


「かぁ~、負けたぁ~、悔しい~……」

「へへーん、どうだった? 私の『雨術水龍』……強いでしょう?」

「そうだね。これなら、大会優勝も狙えるんじゃない?」


 その後も、二人は下校時刻ギリギリまでバトルをしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る