㉜話 正三位大納言常陸守黒坂真琴

【原作書籍4巻付近】


「殿、小次郎様からお手紙が」


落馬をして怪我をしてしまい湯治をしていた小野川の宿に弟・小次郎政道からの書状を届けにきた。


当然、黒坂常陸の秘密を知らせる手紙ではない。

その為、小次郎政道の家臣が正式に届けた書状。


「どれ、なにが書かれているかな・・・・・・黒坂常陸が大納言!しかも、常陸と下総の国を任される!我らに恩賞なくなぜ黒坂常陸ばかり・・・・・・!」


読んでいた手紙を床に叩き付けるとそれを拾った小十郎が、


「殿、続きが書かれておりますぞ。伊達家には陸前・磐城の領地が賜れると」


「磐城は相馬義胤の領地のはず、相馬が不服を申すはず」


「相馬義胤殿の事はですね・・・・・・上総・安房の二カ国の大名として国替えと書かれています」


「磐城の小大名が二カ国の国持ちそれ程の加増なら不満は抑えられるか・・・・・・」


手紙には他に、

最上家が羽前・羽後

上杉家が越後・岩代

南部家が陸奥・陸中

津軽家が津軽・羽後


と、蘆名・佐竹討伐に参加した奥州の大名に対する恩賞が書かれていた。


破格すぎる恩賞。


小次郎が書いた手紙には九州の島津を討伐した後正式に幕府から御下命があるのでそれまで心して準備されよ。

この事は織田信長公側近・森蘭丸が奥州の各大名に内々に知らせていることで、伊達家には黒坂常陸の重臣・森力丸の配慮で小次郎が知らせる事となったっと文末に書いてあった。


「あの戦いで味方した大名への破格の恩賞・・・・・・父上様の言葉通りに動いていて良かったな小十郎」


「はっ。しかし、磐城ですか・・・・・・」


「なにが不満だ? 海に面していて温暖な土地、良きところではないか?」


難しい顔をする片倉小十郎景綱、


「殿、隣国は常陸・・・・・・黒坂常陸様になりまするぞ」


「うっ、そうなってしまうな」


「これは国境の争いなど少々のことでも幕府に仇なす者として討伐の口実を与えかねないと思われます」


「であるな・・・・・・。国境にの近くに誰を置くか・・・・・・厳選せねばせっかく二カ国の国持ちのなったのにあの船団、大砲の餌食となってしまう」


難攻不落の小田原の城の落城。


そして100000もの軍勢を蹴散らした久慈川の決戦。


それを考えると鳥肌が立った。


「正式に幕命が出るまで熟慮しよう、小十郎」


「はっ、それがよろしいかと。 それと、黒坂常陸様の御側に仕えさせます女子、しかとした者にしないとならなくなりましたぞ」


「伊達家と黒坂常陸の仲を取り持つ女子・・・・・・小十郎、適任な者がいないか急ぎ探せ」


「はっ」


嬉しい恩賞の知らせだったが、織田信長公の軍師として確固たる実力を見せつけた黒坂常陸が隣国になる事は大きな不安となった。

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