第992話 七夕

1631年8月




霧仁左衛門との戦いから半年が過ぎ、平和な袋田大子城で、盛大に七夕祭りを催した。




上内外、平成時代の七夕飾りを思わせる色とりどりに飾り盛大に祭りした。




今宵は梅雨も明け、綺麗な星空が見えていた。




いつぞや茶々に見せた仙台の七夕祭りを忘れないでいた茶々の提案だった。




「茶々って何気に、月や星に憧れを持っているよね?」




「私、好きですよ。竹取物語も憧れましたが、彦星と織り姫の物語も切ないではございませんか」




「織り姫の星ベガと、彦星アルタイルは全くと言って良いほど近しい星でも何でもないんだけどね」




「どうして、真琴様は私の夢を壊すような事を言うのですか?」




頬を膨らませて怒る茶々に、信長様も、




「常陸が悪いぞ。しかし、あのように近しい星に見えるが遠いのか?」




夜空を見上げながら言う。




「茶々、聞きたくなかったら他のみんなと楽しみなよ。信長様に未来の科学的な見地から話すからさ」




「ふふふっ、怒ってませんよ。真琴様は昔っから変わりませんからわかってますよ」




そう言って、怒ったのは演技だったと笑ってみせる。




「流石、茶々か。えっとね、織り姫と彦星の距離って、光の早さで15、6年かかる距離なんだよ」




流石に何キロ離れているかまでは覚えていないが、無口な宇宙人美少女、やたら可愛く禁則事項が多い未来人、光の球になる超能力者が出てくるライトノベルで書かれていた。




「もう、真琴君の知識の限界?私の出番かしら」




佳代ちゃんが話しに割って入ってくると、ベガとアルタイルの距離は152兆キロメートルの説明を始めた。




どれだけ遠いか説明するのに苦労しているみたいだったが、一年に一回、牛車で会うとなると凄まじいスピードで走る牛が必要な事だけは理解してもらっていた。


すると、茶々は、




「まっ、神々のお話ですから、真琴様は星の神の力だってお借りになるのに、夢物語を否定するなんて可笑しいですわね」




「ぬははははははっ、常陸、茶々に一本とられたな」




「確かにそうですね・・・・・・」




確かに大甕神社に封印されている星神香香背男ほしのかがせおの力も借りる。




そして、これから考えている大技もそれに近い。




「信長様、もう一度聞きますが、未来に、そして、地球の外に行きたいと思っていますか?今でも」




「あぁ、行きたい、行ける物なら行ってみたい。未来から佳代が乗ってきた乗り物はもう直らないのであろう?」




この半年、暇を持て余している織田信長は佳代ちゃんが乗ってきたタイムマシーンに座っては、未来に夢見ていた。




「ならば、陰陽道最高奥義を使おうと思います。安倍晴明が使ったような延命を願う物ではないのですけどね」




「泰山府君の祭か?聞いたことはあるぞ、使えるのか?」




「泰山府君の祭とは違うんですけどね、月夜見の力を借りて魂を封印いたします。佳代ちゃん、このタイムマシーン、お祖父様が魂を眠りに着かせる呪法を用いたでしょ?」




佳代ちゃんはコクリと頷くと、タイムマシーンの秘密を語り出した。

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