第981話 ??石川五右衛門??

『袋田大子城、なにか運び込まれたか?


大切な物?宝か?世界の金銀財宝?


よし、噂を流して盗人どもを焚き付けてやる。


少々様子見に使ってみるか。


・・・・・・ほう石川五右衛門なる手練れの盗人が入るか・・・・・・これは良いぞ』


◆◇◆◇


 黒坂常陸守の財宝か、さぞかし素晴らしい物に違いない。


聞けば、黒坂家四人衆は異国の王となり、その子達は茨城城や安土城など若殿に仕えていると聞く。


なら、袋田大子城は手薄。


奪って盗賊として名を高めてくれる。


・・・・・・。


「初姉上様、首はねちゃって良い?」


「お江、待ちなさい。見せしめに袋田大子城で初の地獄の業火の刑にいたしますから」


「え~ここで斬っちゃおうよ」


袋田大子城に新月の夜、忍び込んだ。


暗闇に紛れ誰にも気配を感じ取られなかったはず。


この俺の気配など誰が気がつく。


そう自負していた。


だが、俺よりも静かに暗く虫というより風というより、まるで霞のように近づき後ろを取られた。


殴られ気を失いかけているときに聞こえたのは、お江と初・・・・・・黒坂常陸守の側室・・・・・・。


そうか、前田慶次、真田幸村、柳生宗矩、伊達政道、黒坂家四人衆だけではなかった・・・・・・。


噂だけだと思っていたが格が違いすぎる。


本当のくノ一・・・・・・お江・・・・・・武術の達人お初・・・・・・


消えゆく意識の中、美しい二人はニヤニヤと微笑んでいた。


◆◇◆◇


 なんだ不甲斐ないの~つまらん。


京の都で暴れ回っている盗賊と聞いたのにこれほどあっけなくやられるとはつまらん。


やはり、儂が行かねばなるまい。


織田信長は必ず来るはず、それを待つ。



◆◇◆◇


「マコ~変な虫捕まえた」


「お江、またか?あの時注意したはずだぞ」


「真琴様、今回は私も一緒でしたし、忍び込んだ気配からさほどの者ではないと、わかっていましたから」


「ん?うん、そうならまぁ仕方ないが・・・・・・小滝、自白剤で先ずは」


「はい、御主人様」


捕らえられた盗人に自白剤を飲ませて誰に頼まれたか聞こうとすると、盗人界隈で袋田大子城にお宝が運び込まれたと言う噂が流れていたそうだ。


それにしても石川五右衛門かよ。


俺はもっと前に出てくると思っていたのに。


初老と呼べるような石川五右衛門は、この後、余罪をことごとく自白した。


そして、袋田大子城で初の地獄の業火の刑となった。


子供や妻などとは入れなかったため、歌舞伎の見せ場になるような事件は起きず、ひっそりと油揚げになっていた。

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