《3巻発売日》第975話 黄泉送り
「ミライア・・・・・・」
オルショリャからの知らせで、アセナの操縦でお初とお江を乗せヘリで飛んで袋田の城の中にはに降り立つと、オルショリャが憔悴しきった顔で出迎えた。
茨城城の守りは茶々に任せて、高琴は手勢を率いてこちらに向かっている。
オルショリャは静かにミライアが寝かされている部屋へと案内してくれた。
新築の城を見ている余裕はない。
ベッドに寝かされたミライアは白い肌が益々白くなり、この世界の住人ではなくなった事を物語っていた。
静かに手を握る。
冷たく固まりつつある手。
部屋の隅では天穂
あめほ
が、遠くを見る目でただ固まっていた。
「・・・・・・なにがあった?・・・・・・いや、ちょっと待て何か遠い昔に感じた気を妖気を感じる」
目を閉じ集中する。
「払いたまへ清めたまへ守たまへ力を貸しあたへたまへ、武甕槌大神よ、黒坂真琴が願い奉る。力の片鱗をお貸しください」
感じる感じる、そして思い出す。
本能寺の明智光秀、関東の乱の南光坊天海に似た妖気を。
「父上様、俺たちの見立てでは妖魔かと」
ボソリと熱田と神産が言う。
「おそらくな。この父が幾度も退治してきた物の本体の気と見た。しかし、なぜ今ここで?」
「父上様、那須で狐と思しき妖怪の影を見たなどと噂が・・・・・・」
「那須か、殺生石あたりで回復をしていたのやも、くそ、まさかこんなことが起きるとは」
予想だにしていない事が起き混乱する、
「マコ~大丈夫?」
と、お江は背中からいつものように首に手を回し、優しく抱いてくれた。
「おのれ~妖怪、ミライアの仇
かたき
は絶対取ってやるんだから」
お初は握った拳から血を流しながら涙をこらえていた。
「オルショリャ、笠間の南蛮寺から宣教師に来て貰ってくれ。神デウスの元に送ってあげたい」
笠間城には南蛮寺が造られた。
高山右近の件などもあったが今は同盟関係であるバチカンから宣教師が交代で来ている。
「・・・・・・ミライアは常陸様に送っていただきたいはず。常陸様の御力で」
「・・・・・・父上様、ママはバチカンより父上様を崇拝していましたから」
うつろな目で天穂
あめほ
が言ってくる。
「そうか・・・・・・なら、伊弉冉尊の御力をお借りして迷わず黄泉送りをいたす」
その晩、ミライアの遺体を荼毘に付し祭祀を執り行い魂が迷わず黄泉へ向かうよう祈りを下げた。
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