第926話 太古の湯

「常陸、そろそろ風呂をだな、入りたい」


と、珍しくリクエストしてきた織田信長。

当然だ、約三週間風呂なし生活。


寒いとはいえ、設営やらいろいろ動けば毛皮の中は蒸れる。


「お初、一度、潜水艦に戻って大釜一つ積んであるから持ってきてくれ」


「なら、私はお江と交替してきますね。お江もずっと海では可愛そうなので」


と、アセナが操縦するヘリコプターで潜水艦に戻って行った。


夕方になると、お初の代わりにお江がヘリコプターに吊らされた大釜と一緒に到着した。


「んも~マコ、なかなか交替させてくれないから忘れているのかと思ったよ~」


と、抱きついてくると、


「うわっ、酸っぱっ、マコの匂い好きだけと、流石に・・・・・・臭いよ」


と、言われてしまった。


南極大陸茨城城にいる者は皆気が付かなかったがなかなか醸し出している。


潜水艦は風呂とまでは行かないが、エンジンの熱を利用して温水は出るので、限られた量ではあるが体を流すくらいは出来るようになっている。


「だから、この大釜を頼んだの、風呂にするから」


と、家臣に指示を出して大釜を設置して氷を入れて焚いた。


何気に女性が多いが、周りは簡単な囲いしか設けていないが、うちの家臣にのぞきなど不埒なことをする者はいないので大丈夫だろう。


「うむ、先にいただこう」


と、信長は力丸と一緒に囲いの中に入っていった。


「との様 小屋 もうひとつできねーか?です」


と、ヘーブンが聞いてきた。


「ん?なにか作りたい?」


「むし風呂 つくっぺ です」


「あ~北欧出身だもんね、サウナかぁ~、お江、潜水艦にまだ資材ある?」


「予備のドームがあと一つ残っているよ」


「じゃ~明日はそれをアセナに運ばせるか?」


と、頼んだ。


「マコ~ここに住むの?結構大がかりな設備になってきてるけど」


「あっ、いや、犬ぞり隊にはちょっと毎日少しずつ探検して貰って道を考えて貰っているんだよ」


「あ~南極点だっけ?」


「うん、そこを目指しているから、ここはその拠点だから」


犬ぞり隊には潜行して貰ってキャンプ基地を作って貰っている。


安全なルートを確保してから織田信長と共に行くつもりで準備を整えている。


「うむ、久々にさっぱりしたぞ」


と、信長と力丸が出てくる。


「太古の湯、結構でした」


と、力丸。


「そっか、そう言えばこれも太古の水になるから考えると風流だね。じゃ~俺も」


と、五右衛門風呂に浸かりながら、


「南極の湯 太古の水に 浪漫浮く」


と、一句詠みながら汚れを流した。


次の日にはドーム型のサウナが出来上がると、集められていた隕石を焼石にして蒸し風呂も出来上がると、ヘーブンは大いに喜んでいた。

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