第908話 首都の整備
「父上様、お元気そうで何よりです。先ずは茶をどうぞ」
と、信琴が出迎えてくれた。
屋敷の茶室で信琴の点てた茶を飲む。
若いながらもしっかりとした強い茶を点てる信琴、茶々に仕込まれたのだろう、なかなか美味い茶だった。
「美味いな」
「父上様に褒めて貰えて光栄です」
と、喜んでいた。
「信琴、早速で悪いが、なんだ?この安土の町造りは?」
「はぁ、信忠様が離れた後、秀信様と三河守様が拡張工事を始めまして・・・・・・私の意見はなかなか通らなく」
「徳川秀忠と比べると若いから馬鹿にされているのか?」
「はぁ、まあ馬鹿にされているほどとまではいきませんが、やはり内政を任されてきた徳川家、外交を任されている黒坂家と言う感じで」
「なるほどな、だがそういうときは同調してくれる森家や前田家と共に間違っていることは間違っていると指摘しなくてはならないぞ。この一極集中都市、また地震などが起きたらひとたまりもない。人が集中するという事は、疫病だって流行りやすくなる」
「父上様、私はそれはわかっているのですが・・・・・・」
「わかった、俺自ら指導する。このままでは江戸のような町が出来上がってしまうからな」
「江戸?」
「気にするな」
徳川幕府が造る江戸の町は一極集中都市、密集しすぎて弊害が大きい。
大火災は度々起き、疫病蔓延も何度も発生している。
そして、密集しすぎた町は美しさのかけらもない平成の東京と言う町に続いてしまっている。
それを避けるために琵琶湖を利用して水運でつないだ大きな都市を構想したのに。
近江一帯を首都として活用するのに六城を築いたと言うのに。
その時だけの目先の便利さを求めた都市作りはしてはいけない。
災害が発生したとき、それは一番よくわかる。
天正大地震の際は安土や長浜の被害を他からの支援で早い復興をさせたのに。
「父上様、大変忙しく世界が必要としているのはわかるのですが、少しこちらで内政をしていただけないでしょうか?」
「信琴、もう父親を頼る歳ではないはずだぞ?常陸藩を見てきたが、俺が理想とする形として信琴は作り上げたのだ、自信を持って国その物を造って良いと、父は思うぞ」
「父上様・・・・・・」
「まぁ良い、今回は俺が釘を刺す、明日登城すると手配いたせ」
「はっ、すぐに」
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