第890話 極寒の海

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、寒い寒い寒い寒い、痛い痛い痛い痛い、耳がちぎれる~~~~」


「五月蠅い、黙れ」


と、鉄扇で織田信長に叩かれた。


理不尽だ。


織田信長が見たいと言うから付き添っているのに。


「真琴様、お風邪をめしますから毛皮を」


と、茶々が綿の入った着ぐるみに近い、熊の毛皮出してくれた。


「マコ~見てよ見てよ、お坊さんみたいなの海から顔出しているよ」


と、もう熟年だというのでお江ははしゃいでいる。


だが、初めて見る動物には年齢は関係ないか?


「あれはアザラシか?樺太にも似たようなのいただろ?」


「ん~そうだっけ?なんかあっちのはもっと可愛くなかった気がする」


アザラシとオットセイの可愛さの優劣は付けられないだろう。

主観的な好みになるのではないか?


「あれはおそらくアザラシだと思うぞ。流氷の下は魚が多いから豊かな海だからな」


「へ~、氷の下は魚多いんだ~」


「そうだと、習っただけだから」


と、戦艦・国之常立

くにのとこたち

には、ゴツンゴツンと流氷がぶつかる衝撃が続いている。


「信長様、ここいらで接岸しますよ。幾ら何でも真冬に北極点目指すのは無理すぎますから。準備だって整ってないのに」


「そうか、だが、あれは見られるのだな?」


「はい、北極圏なので大丈夫なはずです」


ノルウェーより北の海に浮かぶ島に接岸した。


「しかし、昼間だというのに真っ暗闇ではないか?」


「もう、これは極夜って言うんですよ。自分で電子辞書で調べて下さい。俺は寒くて外になんて出ていられない」


俺は寒いのが大嫌い。


しかし、織田信長が行きたいという場所に付き合うと言ってしまった以上、約束は守らねばならない。


って、織田信長は、薄着で極夜と言う不思議に浸っていた。


欧州イバラキ島で新しい艦隊編成を済ませると、織田信長はイギリスに自ら使者を送り、ノルウェーのほうに行くので「先触れをしておいてくれ。観光じゃ、敵意はないと原住民にな」と、準備をしてしまうものだから極寒の北極海。


俺だってアレは、そりゃ~一度は見てみたいけど、準備しっかりさせてよね。


船室に籠もると、


「なんで、こんな寒いところに来ないとならないのよ」


と、珍しくお初も寒さの限界でこたつで縮こまっていた。


「夜になればわかるさ。俺もそれは見たかったから」


と、答えると


「もったいぶらないで何が見えるのか言いなさいよ」


「説明が難しいんだよ。オーロラって言うんだけどさ。大体俺だって初めてなのにそんな説明できるかって」


と、俺も寒さで気が立っていて怒ってしまうと、佳代ちゃんが、


科学的に難しい言葉を使って説明していた。


それを聞きながらうとうととしてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る