第881話 競い合う二人

◇◆森蘭丸◇◆


 常陸様も、お人が悪い。

我々のように競い合いそうな二人を同じ艦隊にするとは。


と、隣を航行する伊達政宗の戦艦を見て思っていた。


しかし、伊達殿は歴々の戦いにも参加なされておる。

常陸様の厚い信頼がある・・・・・・ここは競い合わず同調が第一。

伊達殿はわかっているのだろうか? 


先ずは、コンスタンツァの前田殿に情勢を聞き、食糧水の補給をしなくては。


◇◆伊達政宗◇◆


 常陸様も、お人が悪い。

我々のように競い合う二人を同じ艦隊にするとは・・・・・・。


と、隣を航行する森蘭丸の戦艦を見て思った。


これは競い合えという事か?


ならば、急がねばなるまい。


「者どもよく聞け、韋駄天の伊達の名に恥じぬ迅速な戦いをするぞ」


「おーーーー!」


と、家臣達は雄叫びをあげた。


「全速でコンスタンツァで補給、オデッサまで進んで、港に艦砲射撃を行う」


と、指示をして森蘭丸の艦隊より一歩前に出てコンスタンツァに入港した。


◇◆前田慶次◇◆


 御大将はなにを考えているのか?

このように御大将、黒坂常陸守真琴を慕う二人に艦隊を率いさせては、どちらかが抜きに出ようとするもの。


ふむふむふむふむ、これは伊達政宗がそう考えているな?ならば、儂が乗船しよう。


「石田殿、町の再建なら大丈夫ですね?」


「はっ、私はそのような政治のほうが得意、お任せ下さい」


と、石田三成は筆をはしらせ算盤をパチパチとはじいて次から次に政務をこなしていた。


儂の家臣団も、おいていけば大丈夫だろう。

よしよし。

そうこうしていると森蘭丸艦隊も補給に到着した。


「伊達殿、一緒に乗船させていただきますぞ」


「なんですと!」


「っとに、あなた方二人にしておいたら、せっかくの艦隊はバラバラ、個々に攻撃されて大打撃を受けてしまいます」


と、言うと、森蘭丸は、


「私はその様な事は」


伊達政宗は図星のようで口ごもっていた。


「軍監として乗せていただきます。良いですね?それとも御大将に連絡して命じて貰いますか?」


と、二人に言うと、どうやら納得のようで反論はなかった。


「では、補給をしてオデッサに向かいます。先頭はそれぞれ小型船を前に出し敵潜水艦に注意しながらゆっくりと進みます」


と、言うと、どこか不満げな伊達政宗だったが口を出すことはなかった。


ここでの海の戦いは明らかに儂のほうが経験が多い事を尊重したのだろう。


御大将の義兄弟を名乗るなら冷静さを持ってほしいものだ。


そう思いながら艦隊をまとめ進ませた。

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