第853話 御神刀その1

「宗矩、そのアンカラと対決したとき一太刀も当てられなかったのか?」


と、戦いのことについて詳しく聞くと、


「いえ、斬ったのは斬ったのですが、手応えが・・・・・・」


「なるほどな、アガリアレプトのように特殊な存在にまで昇華しているやもしれぬ・・・・・・」


しばらく対策を考える。

アガリアレプトは佳代ちゃんが持っていたお祖父様が陰陽力を込めた弾で倒した。

・・・・・・今の俺なら・・・・・・。


「宗矩、しばらくイズミールを頼んで良いか?」


「はっ、今の戦力なら問題ありません。幸村もそっさく砦作りを始めているので」


と、返事をする中、それを椅子に座りながらヨーグルトを食べている織田信長が、


「何かしたいのだな、行ってこい。儂がここにいてやる」


と、言う。


「え~、もう、信長様は出陣はしないで良いですから」


と、止めると


「人を年寄り扱いしおって」


と、怒っていた。


艦隊の指揮権を宗矩に一時譲って、俺は欧州イバラキ島へ佳代ちゃんの操縦で飛んだ。


「ねぇ、真琴君、何するの?」


「いや、刀に力を込められないか試してみようかと」


「私の銃みたいにだね」


「お祖父様みたいに上手くいくかはわからないけれどね」


と、欧州イバラキ島に着くと、オルショリャ達が駆け寄ってきた。


「真琴様、突然の帰島どうしたのですか?」


「おっ、みんな元気か?」


と、母親の後ろで見え隠れして恥ずかしがっている子供達に笑みを向けるが、さっと隠れられてしまう。

仕方がないが寂しい。


「ごめん、ちょっと時間がないから」


と、残念だが刀を打っている鍛冶師の所に向かった。


俺の予備として持ってきている水戸刀十振りを渡して、付け根に彫刻を頼んだ。

面には伊弉諾のお姿、裏面に伊弉冉とのお姿を刻んで貰う。


仕事は早く三日で出来上がった。


その間、子供達と距離を縮めようと頑張ったが長く離れていたせいか、どうも懐いてはくれずにオルショリャは苦笑いをしていた。


出来た刀を欧州イバラキ島ににある分祀して奉っていたる神社の祭壇に供え、祝詞を上げる。

神事用の正装に着替えて。


「かけまくもかしこきいざなぎのおほかみつくしのひむかのたちばなノをどのあはぎはらにみそぎはらへたまひしときになりませるはらへどのおほかみたちもろもろのまがことつみけがれあらむをばはらへたまひきよめたまへとまをすことをきこしめせとかしこみかしこみもまをす」


茨城県つくば市の筑波山神社に奉られている伊弉諾と伊弉冉の大神の力をお借りしようと・・・・・・。


無理があるか・・・・・・。


「伊弉諾大神、伊弉冉大神、この世界から悪鬼を蹴散らすお力をどうかどうかお貸し下さい。この世界から魔を封じる戦いにお力を」


・・・・・・やはり本宮でやらないと駄目か?

・・・・・・やはり俺では力不足か?

・・・・・・なにが足りないというのだ?


天穂

あめほ

、熱田

あつた

、菊理

くくり

、神産

かみむ

が突如神殿に入ってきた。

扉の外でこっそりと見ていたようだった。


「ちちうえ、これつかって」


と、小さな手に抱えられてきたのは御神酒入れだった。


「え?」


「あめほと、くくりがつくったの」


外で覗いていたミライアを見ると、


「口嚙酒です。佳代様から大変神聖な物だと聞いていたので、この子達につくらせ、神殿に奉納させていただいていたのです」


と、


「そんな事してくれていたのか」


と、頭を撫でてあげると、熱田

あつた

と、神産

かみむ

は、


「ぼくたちは、お水くんできたんだよ」


と、協力していたのをアピールしてきた。


四人の頭を撫でてギュッと抱きしめ、祭壇に向き直り、刀に口嚙酒をかけ、再び祝詞を唱えた。


「かけまくもかしこきいざなぎのおほかみつくしのひむかのたちばなノをどのあはぎはらにみそぎはらへたまひしときになりませるはらへどのおほかみたちもろもろのまがことつみけがれあらむをばはらへたまひきよめたまへとまをすことをきこしめせとかしこみかしこみもまをす」


・・・・・・すると、刀が一瞬カメラのフラッシュがたいたように光った。


手に取って確かめると、明らかに神力が備わった刀に代わっていた。


「みんな、ありがとうな」


と、後ろで正座をしてお行儀良くしていた子供達一人一人を抱きしめて御礼を言うと、照れていた。



「ごめんな、ゆっくり出来なくて」


と、飛行機に乗ると、子供達は母親の足下に隠れながらも手を大きく振ってくれていた。


必ず帰ってきていっぱい遊んであげようと心に決め、再びイズミールへととんぼ返りした。

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