第852話 悪魔の残り香

 石田三成が率いるスロバキア王国軍がルーマニアへ進軍の知らせと共に、若い娘が縛られて送られてきた。


石田三成が書いた書状には、アナスタシア・リュリークからの使者で首を撥ねようかとも考えたそうだが、生きたまま送ったほうが良いだろうと判断したらしい。

猿轡をされ縛られている若い娘。


「いかがいたしますか、御大将」


「臭いな」


「はぁ~、このような時に女子の臭いですか、御大将」


と、宗矩が呆れていた。

俺の匂いフェチを知っている宗矩と幸村は残念そうな視線を俺に向けてきた。


「いや、そうではない。嫌な魔の臭いを感じる」


「魔・・・・・・御大将、そう言えば、アンカラと対峙いたしましたが、人ならざる動きを・・・・・・私も危なく・・・・・・」


柳生宗矩を窮地に陥れた?


「ここまで来て、まだ妖魔、悪魔か・・・・・・」


『「まさか・・・・・・予が・・・・・・予が消えても悪魔に魂を売る者が現れれば・・・・・・」』


アガリアレプトの最後の言葉を思い出していた。


「御大将、厄介ですね」


と、幸村もしみじみ言う。


「この者も残念だが魔に侵されている。俺の力では厳しい。残念だが死んで貰う」


若い娘だろうと今は戦の最中、無慈悲な決断をしないとならない。


「うむ、立派な武将になったな、常陸」


と、扉をあけ入ってきたのは織田信長だった。


「あっ、来たんですか?」


「こんな戦になっているのに来ないわけがないであろう。どれ、その娘は異国の魔に侵されているのだな?」


「はい、ですので生かしていると周りの者に影響が・・・・・・」


「見れば、まだ14、5の娘ではないか、可愛そうに。ヴァチカンに常陸のような異教の陰陽師、悪魔払いがいると聞いた、そこに送ってやれ」


と、意外な事を織田信長は口にした。


「信長様・・・・・・丸くなりましたね」


「ぬははははははははははははっ、そうかもしれぬな」


と、大きく笑って見せた。


「この娘は、悪魔払いに引き渡す。そのように手配してくれ」


と、指示を出した。


その後、この娘はギリシアの崖の上にあるメテオラ修道院で修道女となり、感謝の手紙が届くのは数年後の未来の話だった。

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