第818話 襲撃

 松明の炎で照らされたペトラ遺跡は、幻想的で異世界の神殿に迷い込んだような錯覚を見せていた。


「綺麗だの」


と、織田信長と焚火を囲んで酒を酌み交わしてている。

お江が俺のひざに頭を乗せてスヤスヤとしていた。

茶々達はペトラ遺跡の中で休んでいる。

織田信長と肩を並べて酒を酌み交わす自分って、もうおっさんだな・・・・・・。

長い付き合いで義父、本当の父親と酒を飲んでいるみたいで、なんだか感慨深い。


「常陸、良い物を見せてくれてありがとう」


「なにを今更、俺だって見たい物だから良いのですよ」


「そうか?まだまだ見たい物は世界にある。案内頼むぞ」


と、杯を口に運んだ瞬間、突如、銃声が断崖の通路にこだました。


後ろへと倒れ込む織田信長・・・・・・。


その光景を目にした瞬間、隣で寝息を立てていたと思ったお江が、覆い被さり俺を地面に押し倒した。


「お江。ダメだどけ、狙いは俺と信長様、お江、離れろ」


「駄目、絶対にマコを死なせるわけにはいかないもん」


二発目の銃声が響くとお江が


「ぐっ、絶対守るも・・・・・・ん」


「おごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉう」


体重が俺の全身にのしかかった。

その瞬間、お江が撃たれたのがわかった。


「敵はあそこだ、撃て撃て撃て、取り逃がすな」


と、柳生宗矩が命じているのが聞こえた。


次々に撃たれる銃声。


長い銃撃戦・・・・・・実際には5分もかからなかっただろう。


崖の上から落ちてきた一人の狙撃手は事切れていた。


崖の上を捜索する兵士達、撃たれた織田信長を運ぶ佳代ちゃんや茶々達、俺もお江を抱えて遺跡の中に急いだ。


「お江、死ぬな、おごぉぉぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・」


「真琴君、あっち行ってて、すぐに手当を」


と、佳代ちゃんが医療セットを広げて織田信長とお江の傷を確認した。

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