第814話 西の壁(嘆きの壁)

 岩のドームを出て案内されたのは岩が積み重ねなれた壁。


神殿あとの壁。


平成時代、ニュースなどで報道される時は『嘆きの壁』と呼ばれるが、それは正確ではなく、ユダヤ教徒も『西の壁』などの名称を推奨している。


ムリタファスに変わり案内してくれるユダヤ教徒は、全身黒い服を身にまとい、モミアゲがやたら長い。

モミアゲはユダヤ教徒にとって重要な物で生まれてからずっと切らない習慣を守る宗派もいる。


そのこんもりと長いモミアゲを凝視してしまう茶々達。


「そういう教えがあるんだよ」


「仏教の僧侶は髪を剃り上げますが、そのような教えの宗教もあるのですね。凝視してしまい申し訳ありません」


と、茶々が謝っていた。


「慣れているから良いのです。それに私達は黒坂様に感謝していますから」


ん?ユダヤ教保護政策などまだしていないが・・・・・・。


と、首を傾げると


「オスマン帝国アメフトス皇帝が、黒坂様の他宗教他民族文化尊重主義に賛同されているおかげで、私達は自由にここで祈りが捧げられます」


「そう言うことか、俺は残虐な行為以外の伝統文化は尊重し保護し継承していくべき物だと思っていますから。ただ、それをまとめる領主だけでなく下々の者もお互いがお互いの文化を尊重する世界になって欲しいですね」


「はい、黒坂様が開かれた学校の卒業生はそのように学ばれ浸透し始めております。ありがたいことです」


いろいろな民族を受け入れ生活させている学校の卒業生は、他者を尊重する心を持つよう教育に入れている。


それが浸透すれば、宗教が原因となる争いも少しは減るだろう。


「この壁に祈る姿は、まるで禅だな」


と、織田信長は見ていた。


「確かに形は違うけど、そんな風に見えなくもないですね」


「自分で世界に入り込む姿、よう似ておる」


織田信長はそうやって分析していた。

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