第774話 ツタンカーメンの墓

1613年12月31日


 明くる日、早速、積もった砂をどける作業から始める。


当然、俺もその作業に加わり砂を運び出す。


「大殿様、そんなこと、あっしらに任せておくんなせい。これが仕事でやんす」


と、人足頭が言ってきたが


「やらせてくれ、この砂の中にある階段を自分の手で掘りたいのだ」


と、俺は汗だくになりながら働いた。


織田信長は眺めているだけ。


掘る掘るどける。


掘る掘るどける。


掘る掘るどける。


を繰り返すと岩盤にたどり着いた。


砂を慎重にどけ続ける。


「ぬははははははははははははっ、あったぞあったぞ、あったーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


俺は地下に続く階段を発見した。


興奮しかない。


幾千年も封印され続けた未開封の墓。


黄金の棺、黄金のマスク、そして、多くの副葬品が眠る墓の発掘の成功。


「出たか、常陸」


と、座り見ていた織田信長も立ち上がった。


「この奥にある壁の向こうです」


ツタンカーメンの墓、本来はハワード・カーターが1922年11月4日に見つけるはずの物。


それを俺は先だって発掘する。


ツタンカーメンの墓、発見者・黒坂真琴になった瞬間だ。


階段にある砂をどけ、下に入ると壁に突き当たった。


「大殿様、何も御座いませんよ」


と、人足頭、


「この壁を壊す・・・・・・いや、斬る」


「え?大殿様?」


困惑する人足頭の脇をお江が愛刀の太刀を持ってスッと入ってきて、俺に太刀を渡してきた。


「皆、下がれ。いざ、【鹿島神道流、秘技一之太刀・雷鳴】」


俺の最強の抜刀術で壁を斬った。


「大殿様、無茶苦茶でんがな~~~」


壁には一つの漸撃のあと、


「あっ、これでは入れないか。ならば、左片手一本突き『牙突』」


と、憧れの漫画を真似して自らの技にした月を繰り出す。


最早、興奮状態、テンションマックス。


すると、一人入れるほどの円形状の穴が綺麗に開いた。


「マコ~、無茶し過ぎ。よいしょっ」


「あっ、こら、お江、先に入るな」


・・・・・・・・・・・・。


お江に先を越されて慌てて入ろうとすると、俺の肩を掴む強い力、


「どれ」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、信長様」


俺を後ろに引き倒すと信長も中に入っていった。


そりゃないよ~・・・・・・。

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