第695話 磯原佳代の懺悔

「真琴君、大切な話があるの」


と、夜とぎのあとに磯原佳代は布団から出て正座をして頭を畳にこすれんばかりに下げていた。

俺は畳に着いた手を取り、


「そんな頭下げて、どうしたの?」


と、聞くと


「ごめんなさい。修学旅行で私が大観音菩薩様にお願いしてしまったの。萌香ちゃんに取られるくらいなら真琴君を消してって」


と驚きの真実を聞かされたが、俺は鼻で笑った。

正直に言って怒る要素がないからだ。

むしろありがたいくらいだ。


「ありがとう。むしろ佳代ちゃんの願いを聞いてくれた大観音菩薩様に感謝かな。智也が言っていたようにもしかしたらパワーが蓄積していて、俺の陰陽力と共鳴して、そして、佳代ちゃんの願いを叶えてしまったんだね」


俺はタイムスリップの原因を考えた結果は、約400年のパワーが蓄積し持っていた大観音菩薩様と俺の陰陽の力とが合わさったせいでタイムスリップしたのではないか?と、結論を密かに出していた。

ただ、それだけではタイムトラベルを発動するには不十分だった気はしていたが、強く願っていた人物がいたらすべてが成立するのではと思っていた。


「え?怒らないの?」


「え?むしろ楽しい人生になっているから感謝したいくらいだよ」


「側室いっぱい作れたから?」


「はははははっ、確かにそれはあるね。平成では許されないもんね」


「え?私のいた時代では一夫多妻、多夫一妻って普通だよ。一夫一妻だと少子化になって国が廃れるって真琴君が法律を作っているんだよ。あの時の私は萌香ちゃんが正室で私が側室って事は許せなかったの」


おいおいおいおい、パラレルワールド俺、なんかすごいな。


「ん?人口爆発しないの?」


「地球の人口は100億超えているけど、人工島や砂漠の緑地化で特に問題はないよ」


未来の姿がいまいち想像できない。


「あっ、これ見てみる?」


と、磯原佳代が出したスマートフォンの写真を見ると、青々とした緑地と高層ビルが一体となった姿の都市が映っていた。


「うっ?これどこ?」


「茨城県の茨城市だよ。日本国の副首都」


そこに映る城はまさに俺が作った元祖萌城の茨城城だった。


俺が知る土浦とは全く違う世界になっている。


「パラレルワールドって、こんなに違うんだね」


と、関心すると、


「真琴君、本当に怒らないの?」


「良いんだよ。俺がいた世界の未来ではこんな波瀾万丈の人生は送れなかっただろうから。今がすごく楽しいから良いんだよ」


と、改めて言うと磯原佳代は


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ありがとう。ありがとう・・・・・・ありがとう」


と泣いていた。


「一つだけ気になるんだけど、パラレルワールドだから俺の時間線とは違うだろうけど、萌香ってどうしてる?」


「すごいんだよ。世界的な女優さんになって活躍しているんだよ」


萌香が世界的な女優???


「結婚は?」


「真琴君の弟としたよ」


「はい?はて?はっ?俺に弟、存在しないんだけど」


「パラレルワールドの未来だから」


と、笑っていた。


パラレルワールドの解釈が難しくなってきて頭が混乱していたので、それ以上を聞くのをやめた。


「真琴君、これからどうするつもりなの?」


「ん~、世界に戦争を起こさせないようにするために、働き続けるつもりだよ」


「私はそのお手伝いをさせていただきます」


と、笑う磯原佳代を再び抱いた。


「ちょっと、真琴君、脇の下臭い嗅ぐのやめて~~~~~そんなに舐めないで~~~~いや~~~~~~」


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