第690話 潜水艦と同級生

潜水艦に向かわせた船から降りてきたのは、俺の家臣である国友茂光だった。


「殿様、ちっょと無理矢理過ぎますって。春から一日も休みなしで作らせるなんて」


と、言う。


「は?俺はそんな急かした命令は出してないぞ。誰がそんな指示をした?」


黒坂家がブラック企業にならないように注意してきていたのに、大工衆にそんな無理矢理の仕事を頼んだのは誰?


・・・・・・・・・・・・。


言葉を失う、驚く、腰を抜かす、顎がガタガタと震えてカチカチと音を出す。

この時代に来て一番の驚きにのけぞって倒れるところをお江とお初がしっかりと支えてくれた。


「真琴君、お久しぶり。会いに来ちゃった」


と、語尾にハートマークが付きそうなくらいの満面の笑みで現れたのはボンキュッボッンの体のラインにぴったりと付いている真っ黒いラバースーツを着、その上から白い長い白衣を着た女性。


・・・・・・・・・・・。


「か、か、か、か、か、か、か、かっ、よ、ちゃ、ゲホゲホゲホッ、オエッ」


あまりの出来事に噎せる俺の背中をバシッとお初が叩くと


「なにをするんですか」


と、その女性はお初を突き飛ばした。


お初はすぐに体勢を立て直して抜刀した。


すると、その女性は俺の大好きな形の銃、ワルサーP38を向けた。


が、お江が静かに刀を首に背中から回り込んで当てていた。


ミライアも抜剣してすぐに突きが出来るように構え、アセナは俺の前でオルショリャと一緒に盾になろうと並んだ。


「ゲホゲホゲホッ、待って待ってゲホゲホゲホッ、オエッとにくか待ってオエッゲホゲホゲホッ、知り合い、知り合いだから」


兎に角止めようと咳き込みながら止める。


「ちょっと、ゲホゲホゲホッ落ち着かせて、本当驚いただけだからやめて、ゲホゲホゲホッ」


「ご主人様・・・・・・大丈夫?」


と、小滝が水筒の水を一口飲ましてくれて落ち着く。


「全員、武器をしまって。その人は俺の友達だから」


少々の老けと言うより成長と言った方が良いだろう。

覚えている。

幼なじみの一人で高校生で修学旅行で一緒にお堂の中に入った一人。


「佳代ちゃん、なんで?」


「未来から会いに来ちゃった」


と、言うと大きく息を吸い込み、


「結婚して下さい」


と、叫んだ。


周りはその言葉で時が止まったように微動だにせず目だけを磯原佳代に向けていた。

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