第668話 常陸国立茨城女子学校歌劇団・初演

1610年 夏


伊達政宗が手配してくれた能の達人の指導や、女歌舞伎役者・出雲阿国に指導された学校の生徒達は半年という短い期間で上演できるまでになった。


ジブラルタル城下に組み立て移動式演劇舞台小屋を作り、そこで公開初日を迎えた。


織田信長ももちろん招待する。


同盟各国の客人を招いて上演。


最初にオーストラリアのアボリジニの音楽で上演のオープニングを幻想的に行い、続いて静の演劇『能』を演じる。


異国人にもわかりやすいように『蚊』が人間とバトルするコミカルな物だ。


そして、動物のコスプレをした女の子達による十二支のレースを描くミュージカルと続き、貧しい奴隷が王妃となる立身出世物語を歌舞伎で見せ、ラストはミクロネシアのハワイアンダンスで幕を下ろした。


約三時間を緩急をつけて上演される舞台に誰一人席を立つ者はおらず、また、演劇中に飲み食いするのに配った松花堂弁当は手つかずの者がほとんどだった。


それほど内容の濃い物を作り上げた。


幕が下りきると一人の異国人が席で立ち拍手を始め、


「ブラボーブラボーブラボー」


と、叫んでいた。


すると皆が同じように拍手をし演者に対して最高の贈り物をしていた。


「常陸、あれはイギリス帝国の大使についてきているシェイクスピアなる者ぞ。お初から聞いたがあの男が作る演劇は後世まで続くそうだな。その男を感動させる物を作り上げた常陸の名は後世に続くぞ」


と、隣で一緒に見ていた織田信長も立つことはさすがにしなかったが、拍手を送っていた。


「文化の高さを見せつけることが出来ますかね?」


「十二分に出来る。そんな事を考えずとも見た者はきっと楽しい物を見れたと感動するだろう」


「信長様に褒めていただき光栄です。この劇団を各地に回らせようと思います」


「なら、パリで上演せよ。神聖ローマ帝国の近くで噂もすぐに届くであろう」


「芸術の都と後世で言われるパリ・・・・・・」


「芸術?なら、常陸はその頂点となったな」


萌え彫刻・萌え陶器・萌え反物・そして、美少女歌劇団・・・・・・。


巷で芸術革命の鬼才黒坂常陸守真琴と呼ばれるようになるのには時間は必要としなかった。


シェイクスピアに勝ってしまった・・・・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る