第666話 萌物語

 不満を言うのは萌えを理解し、萌えを好いて、萌えを愛しているお江だった。


「マコ~、胸がキュンキュンするような物語書けないの?」


「胸がキュンキュン?」


「うん、胸がキュンキュンする物語」


「抽象過ぎてわからないぞ」


「女の子が大活躍するような物語だよ。せっかくかわいい女子達がやるんだよ、もっと仮装して可愛い物語とか」


・・・・・・宝●歌劇団のようなかっこよく綺麗で美しい舞台を想像してしまって、女子高生の演劇部のようなのりと言うのか雰囲気を考えつかないでしまっていた。


そうだよ、若いアイドルが演じるなんとも軽やかな演劇もあって良いんだよ。


宝塚歌●団を薔薇として例えるなら、桜のような演劇だって良いんだよ。


題材はいっぱいある。


それをどう理解されるようにアレンジするかだ。


女子高生・・・・・・肌の露出度を上げた演劇は始めにするべきではないだろう。


なら、動物化だ。


大好きなアニメに美少女が動物化している名作だってあった。


それを今、上演するなら・・・・・・ある、あるじゃん!


十二支を決めるレースをコミカルに描く物語って良いじゃん。


十二支文化も日本の支配権拡大で広まっているし、ちょうど良い。


若い女子達に『鼠』『牛』『虎』『兎』『龍』『蛇』『馬』『羊』『猿』『鶏』『犬』『猪』そして、『猫』に扮した衣装を着せミュージカルで十二支レースを上演するとか悪くないはず。


一日でその脚本と衣装となるイラストを書きお江に見せると、


「これはこれで良いと思うけどなんか違うんだよな~。でも、これは私が教えている軽業が得意な子達にやらせてみるよ」


と、書いた脚本を手に学校に向かった。


お江が求めている萌えっていうのは・・・・・・。


異世界転生した主人公がチート能力で冒険をしながらハーレムを形成していく物語・・・・・・。


書いてみた・・・・・・。


俺じゃん。


この主人公、まんま俺じゃん。


男勝りの長女ヒロインは茶々、次女のツンデレヒロインはお初、三女のロリヒロインはお江・・・・・・書いていくうちに増えるヒロイン達はすべて俺の側室達のようになってしまった。


封印しようかとしたらお江に見つかり、


「これだよ。これ、こう言うのが見たいんだよ」


と、俺から脚本を奪って走って学校に向かってしまった。


・・・・・・お江は異世界転生物がお好きなのね・・・・・・。


ん~なんだろう、異世界転生物を書く元祖に俺がなってしまうのか?


高校時代必死で先駆者達に似ないオリジナルティーあふれる作品を書こうと苦労したのに。


中世ヨーロッパで異世界転生物を書くことになろうとは・・・・・・。

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