第587話 アセナのお水
石けん大量生産開発や、発電機開発、その他執務に追われ忙しい日々を過ごしていると少々食欲が減った。
別に体を壊してあるわけではなく、年相応に疲れが抜けにくくなってきたわけだ。
桜子はいろいろ料理を工夫してくれ、小糸は漢方薬を処方してくれた。
そんな中、今日の秘書役をしているアセナがガラスの水挿しに入れた水を持って部屋に入ってきた。
いつもならお茶の時間で、チャイなのだが。
が、喉も渇いているのでガラスのコップに注ぐ。
ん?あれ?あっ!泡。
「これって炭酸水?」
「そうよ、炭酸水を取り寄せたのよ。胃腸に良いって言われてるから」
いまだに普段はツンとしたアセナだが、俺の体を気にしてくれている。
日本で飲んだものより炭酸が少し強い気がする。
日本の炭酸水は微炭酸。
火山の影響で、日本は炭酸が抜けやすい。
炭酸水は海外のが強いのを聞いたのを思い出す。
重曹完成前に炭酸水が飲めるとは。
「よし、よし」
と、頭をなでてあげると、
「お、お、おにいちゃん、違う~」
と、逃げていく。
なんだかな~と、思いながらもう一杯炭酸水を飲むと襖が影から、
「脇に置いてあるベリーを煮詰めたの溶かして飲んだら、少しは疲れに効くはずよ」
と、言うので小さな陶器に入ったベリーのジャムを溶かして飲む。
ん?ん?ん!
「あれ、似てる。ちょっとアセナ、これ俺が求めてる物に似てるよ。美味しいよ」
襖の影とモジモジしているアセナを誉めると少しジャンプしながら喜んでいるのがわかる。
身に付けている金の装飾品が鳴っているからだ。
「アセナ、これ、複数のジャムを混ぜたりして作り続けてくれないかな?」
「わかったわよ。任せなさい」
ふふふっ、茨城県のソールドリンク『ドクペ』の糸口はアセナにありか。
こちらに来て20年、やっと手にはいるか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます