第549話 神格化?

 翌朝再び、着岸させると異様な光景の港になっていた。


異様過ぎる光景。


それは港町の全住民が土下座をしていた。


5000人近くいるだろうか?


その人々が地べたに正座をして土下座。


あまりにも異質過ぎて、はっきり言って申し訳ないが気持ち悪かった。


「なんだ?」


昨日対応してくれた、ワヌコが


「大英雄様を皆がお迎え致したいと、こうなりました」


「待て待て待て待て、なんだ?その大英雄とは?」


「イスパニア帝国支配から解放し、天然痘をも収束させた黒坂常陸様は我等にとってはピラコチャの再来」


ピラコチャ、インカの神話に出てくる知恵を与えた神の名前。


「待て待て待て、俺は人、普通の人だぞ、神などではない」


「真琴様、これが頂点に立った者が見る光景です。尊敬の頂点に立ったのです」


お初は冷静沈着に分析していた。


「なんだよ、その尊敬の頂点って」


俺は困惑するしかなかった。


このまま土下座を続けさせる訳にはいかない。


「黒坂常陸が命ずる。皆、立ってくれ」


そう言うと、声が届いた所から土下座を止めて立ち上がり整列して大通りに道が出来た。


道の両端に民衆。


逆に襲われないか不安になると、昨夜先に降りていた佐助が寄って来て、


「御大将、この港、いや、インカ帝国は大丈夫なようです。あれを」


と、佐助が指差す方向にはアイ●ンマンそっくりな銅像がそびえ立っていた。


それは、和式愛闇幡型甲冑(わしきあいあんまんがたかっちゅう)を着用した俺であるのは一目瞭然だった。


なぜにこうなった~~~~~。


俺が銅像になるなど思っていなかった。


不思議に汗が流れ出す。


「ちょっと待ってくれ、何なんだ?」


「わ~、マコそっくり」


と、お江は喜んでいた。


「こんなの作るなら、美少女を銅像にしてくれよ」


と、俺は心がなぜかポキッと音をたてたように、その場にうなだれてしまう。


「黒坂常陸様いかがなされましたか?」


と、走り寄ってくるワヌコ。


「大丈夫です。お気になさらずに」


お初は俺の美少女好きに呆れているのは知っていた。


冷たく、


「ほら、立って下さい。美少女の銅像なんて言ってないで」


と、手を取り立つように促される。


そんな中、目の前に輿が運ばれてきた。


12人で持ち上げられる、輿は金の装飾がなされた椅子がある。


「さぁ、これに乗って下さい」


「普通に馬を用意してくれ、神格化は本当に困る」


「しかし・・・・・・」


「兎に角、輿にだけは乗らないからな」


「おい、馬だ、馬を用意しろー」


と、騒ぎになってしまった。


それでも輿にだけは乗りたくはない。


俺はこの国の王でもなければ、それこそ神などではないのだ。


神を信じる者として、輿は畏れ多い。


はぁ~、銅像も出来るなら撤去して欲しいのだが。


ファナと相談だな。


こりゃ~なんだか困ったぞ。

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