第446話 新戦艦・武甕槌練習航海~樺太その2~

鹿島港を出て2日で青森の大間港に到達すると、南部家からの極大マグロの差し入れがあった。


急遽寄ったのだが、ちょうど揚がったばかりのマグロがありそれを貰えた。


なんとも嬉しい。


本場の大間のマグロだ。


それを捌いて刺身で食べる。


「くぁ~美味い」


兵士達にだってもちろん同じで夕飯に舌鼓を打った。


台所を覗くと、マグロの骨がまだある。


「おっ、おっ、中落ちあるじゃん。この骨に付いた身を匙でゴシゴシ取ったやつが一番マグロの匂いが強くて好きなんだよ」


「へ~、マコは本当に美味しいの知ってるよね~、あっ、美味しい」


と、お江も食べると喜んでいる。


「頭は窯に入れて焼いて食べよう。兜焼きも美味いんだよ」


「なんか、兜焼きって縁起悪そうですね」


と、お初が言っている。


武士の感覚なのだろうか?俺は気にならない。


次の日の朝食で、こんがりと焼き上がったマグロの兜焼き。


目の玉のゼラチン質に軽く塩をふりむしゃぶりつく。


お初が怪訝な顔をしていたが無視する。


お江は珍しい物を見るかのごとく目を輝かせてみている。


「なんの臭みもないから食べてみなよ」


と、お江にすすめるともう片方の目の玉を同じ様にして口に含み、硬い目の中心を懐紙で口に出すと


「うわ~不思議な食感、にゅるにゅる、でも美味しい」


と、喜んでいた。


お初の顔が段々険しくなるので人間で言う首の後ろの肉を取り分けてあげる。


見た目は普通にマグロの焼いた物なので、口に運んだ。


「うわ、結構脂ありますね」


「そうなんだよ。マグロは頭が美味いんだよ。頬肉だって美味いんだよ」


と、極大マグロの兜焼きは結局3人で食べてしまった。


マグロは捨てるところがない。


心臓だって美味い、胃袋も軽く茹でて食べれるし、皮も茹でてポン酢で大根おろしで食べたいが、ポン酢を積んでないのが残念だ。


南部家からのマグロは余すとこなく食べた。


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