第431話 失策
コロン港を出て、不思議に俺の船のマストの先には、居るはずもないカラスが「カーカーカー」と、鳴いている。
目をこすり見直すと足が三本のように見えた。
さらに目をこするとそのカラスは消え見間違いかのように消えていた。
それが神からの忠告だったのは俺は気が付くときには窮地に陥ってからだった。
「御大将、敵船に囲まれました。御逃げください。脱出を私と真壁殿が盾となります」
そう、隣の船で大声で叫んでいたのは真田幸村だ。
ドミニカのイスパニア帝国の施設である港をいつものごとく、当然のごとく、当たり前のごとく、艦砲射撃で砲撃を繰り返しいざ上陸するとなった段階で、無数の敵船団の囲まれた。
およそ500からなる大小様々なガレオン船、旗はイスパニア帝国だけでなく他の国と思われる旗も見えていた。
カリブ海の静けさはメキシコ湾、もしくはキューバになりを潜め俺の艦隊が動くのを待ち受けていたからだった。
「盾になるだと、そんな事は許さん、アームストロング砲を狙いをよく定め撃って逃げるぞ」
「駄目です。これだけの船では弾が間に合いません。どうか御大将だけでも」
と、真壁氏幹も大声で叫んでいた。
ドミニカの港に艦砲射撃をしてしまったあと、弾はどのくらい有るだろうか。
射程距離の長さの有利を相手は数で補ってきた。
く、くそ、やらかしてしまった。勝ち続け勝ちに慣れてしまった。
油断をした。
今回もいつものように艦砲射撃で制圧し上陸するやり方、何度も繰り返した慣れから来た失策。
後方に敵船が来ることを想定していなかった。
その敵船団に標的にあえてなろうと、一隻の高速輸送連絡船に突っ込んでいく。
高速輸送連絡船は木造船、しかもアームストロング砲も4門しかない。
「やめろ、やめろ、やめろ」
俺は叫ぶが聞こえているのかいないのか、高速輸送連絡船壱号を任せてある侍大将は俺に大きく手を振り、敵船団に突っ込んでいく。
アームストロング砲を撃ちながら突っ込む。
「やめろー」
最早届かぬ俺の叫び。
アームストロング砲を撃ち尽くした高速輸送連絡船は敵船団に囲まれ大砲の的になって燃え上がっていた。
「さぁ、この隙にコロン港へ戻りますぞ」
固まる俺の代わりに幸村が指揮をとっている。
船が敵船団に突っ込んでいく、俺の船の両脇を左に真壁氏幹、右に真田幸村、前方に高速輸送連絡船弐号船、後ろに参号船。
完全に俺を守る陣形。
「いや、死ぬなら俺だ、幸村、真壁後ろに回れ俺が突撃する」
と、騒ぐと後ろから
「御免」
と、真田幸村配下の佐助に縛られてしまった。
「やめろ、やめろ、やめろ、佐助、やめろーー」
口も縛られる。
「皆の者、御大将の盾となり突撃するぞー」
幸村が叫ぶと、うちの家臣たちは全員右手を上げ
「おーーー!」
と、叫ぶ。
俺はだだひたすらマストに縛られながらその光景に涙を流す。
「あっ!あっ!あれはなんだ」
マストに登っている物見の兵士が水平線のかなたを指差していた。
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