第421話 和睦の条件

 俺は愛用甲冑の面を上げ、お初と席を替わってもらい上段に座ると、ルイス・フロイスは怯えた表情を見せていた。


「殺しはせぬよ、殺せば信雄殿を殺したイスパニア帝国皇帝と一緒になるからな。ファナ、悪いがイスパニア帝国との和睦の条件は俺が言わせてもらう」


インカ帝国皇帝のファナ・ピルコワコの顔をたてるために了承を得る。


ファナ・ピルコワコの皇帝としての器がまだ出来上がっていない以上、俺が補佐してやらねばならない。


多少歪な同盟関係だが、これは少しずつ年月をかけ本当の友好国になれば良いと考えている。


「ご主人さまに お任せしまする」


「ルイス・フロイス、イスパニア帝国とインカ帝国との和睦の条件は、あっ、いや、アスティカ帝国も含めて和睦の条件を言う。この大陸から去れ、去るまで俺はこの地を守り続ける」


ルイス・フロイスは顔を青ざめ目を真っ赤にさせ、


「悪魔だ、悪魔だ、悪魔だ、悪魔がいるーーー」


と、常陸を追い出したときのように半狂乱になりだしている。


それを真田幸村が押さえつける。


「ルイス・フロイス、それとな、イスパニア帝国皇帝に伝えよ、日本と和睦したければ自らの過ちを認め首を差し出せとな。幸村、この者達を丁重に城の外に出せ」


「はっ、かしこまりました。ルイス・フロイス、信雄様の御無念は倍返しだ!」


堺●人さん似の幸村が言うと様になるな。


などと感心してしまいながら一人笑いそうになった。


謁見の間から引き吊り出されるルイス・フロイスの顔には生気を感じられなかった。


「どっちが悪魔だよ、まったく」


と、一人つぶやくとファナ・ピルコワコは


「ご主人さまは 我々には 救世主サマです」


と言って微笑みながら俺の手を取りお腹に当てた。


妊娠は本当だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る