第241話 命名

 お江のあとに、こちらも出産が近いお初がお腹を抱えながら来る。


社殿から転げ落ちた砂利まみれの俺の姿を見て、何をやっているんだと少し苦笑いを含んだ目で見ている。


「ほら、さっさと風呂に入って着替えて小滝、小糸身体を洗ってあげなさい、汚いまま赤子に会わせるわけにはいかないわよ」


と、言う。


「あっ、あーそうだな、着替えなきゃな、でも、ちょっとだけでも見させて」


と、早く見たい気持ちを言葉にする。


初めての自分の子供だもん、とにかく早く見たいが、


「うりゃー」


と、重たいお腹でよく足が上がるもんだと感心してしまう、お初の蹴りが久々に尻に来た。


「逃げないんだから大丈夫よ、ほら小糸、小滝連れて行きなさい」


「はい、かしこまりました」


「御主人、風呂とお召し替えを」


二人に手を引っ張られてしまう。


「とっとっとっと、わかったから、せめて性別を~」


と、お初に向かって言うと、


「おのこよ」


「はい?」


「だから、おのこだって!」


聞き慣れない言葉、男なのか女なのかいまいちわからない。


男の子だろうと女の子だろうとどちらだって嬉しいのだがやはり気になる。


「マコと同じタマタマ付いてるよ~」


「マジか!男か」


「だから、そう言ってるでしょ、男の子(おのこ)だって、ほら、風呂に入って名前考えて落ち着きなさいよね、真琴様」


小糸と小滝に風呂に連れて行かれると、服を脱がされ念入りに洗われた。


俺は頭の中では名前の事でいっぱいで自分の手を動かすのを忘れたからだ。


いろいろ念入りに・・・・・・洗われた。


うん、それはそれで気持ちがよい。


ふっうっと全ての力が抜け去る賢者タイムに閃く。


「よし、決まった、『武丸(たけまる)』だ。鹿島の神、武甕槌大神にあやかり『武丸』と名付けよう」


そう言って、立ち上がると小糸と小滝は、


「よろしいかと思います」


と、賛同してくれた。



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