第233話 田植え
春の田植えのシーズンとなったので、巡察をする事にした。
流石に、真田幸村に任せっきりにとはいかない。
だからと言って、俺が俺として身分を隠さず行けば通常、田植えが見られない。
そこで、柳生宗矩が出している巡察隊に紛れて行くことにする。
宗矩もそれなら問題ないと了承した。
宗矩は俺の広い領地を巡察し監視してくれている。
主たる家臣が少ない俺のサポートをしてくれている。
黒服で深い編み笠を被る集団なのだが、異質と言えば異質なのだが、編み笠に柳生の家紋が付けられているためか巡察隊であるのは一目瞭然。
その巡察隊と同じ服装をして紛れ込む。
流石に遠くまでには行けないので、茨城城と高野城の間の田畑に出向く。
この田畑は幸村直轄で農政改革の実験でも使われている地。
10人程の集団で見に行くと、田植えは始まっていた。
幸村も率先して働いている。
俺の顔を見ては軽く目礼だけしては気付いてはいるが知らないふりをしては田植えを続けてる。
幸村は農民と一緒に働いているせいか、親しまれながら頼られ働いている。
任せておいて大丈夫のようだ。
更に、印旛沼のほうにも巡察に向かう。
印旛沼は新家臣・成田長親に任せている。
印旛沼に着くと、何やら田の脇のあぜ道で踊りを踊りながら声援を送っている者が見えた。
「ヨッコラショイ、ヨッコラショイ、セッセセのヨッコラショイ~」
んー何とも気の抜ける歌。
農民達は笑いをこらえてるのか、苦虫を噛み潰したよう顔をしながら黙々と田植えを続けてる。
俺が編み笠を少し上げ顔を見せると、気がついたのか走り寄ってきて膝を着いた。
「これ、長親そのような事をしては身分がバレてしまう。せっかく身分を隠して巡察に来ているのに」
「も、申し訳ございません。御大将自らが来るとは驚きで」
「あっ!これ」
周りの農民にはなんとか聞こえなかったようだが、不思議がってはいる。
子供たちが近づいて、
「のぼう、どうしたの?」
と、俺の前で跪いている成田長親に寄り添ってきた。
流石に長親も馬鹿ではなく、
「私の上役の方が巡察に来てな、さぁ~みんな続けるぞ」
「のぼう、邪魔してるだけじゃん」
「変な踊りしてるだけじゃん」
「あはははははは、応援をしているのだがな」
と、子供たちはからかっているが親しまれている様子。
「長親、続けよ」
「はっ」
すると、長親は再び踊りながらかけ声をかけていた。
形はどうあれ農民に親しまれているなら良い。
俺の家臣が農民の上でふんぞり返っているわけではないみたいで満足の巡察が出来た。
俺の領地ではこれが当たり前になって欲しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます