第210話 新家臣・鬼真壁(真壁氏幹)

 家臣を募集して一か月、試験を任している柳生宗矩の本には多々の武将が訪れたらしいが、立ち合いで得物を持たない宗矩に木刀で打ち込む者たちは、体に当てる事すらできず、木刀を奪われ投げ飛ばされて、いそいそと帰っていったらしい。


流石、柳生新陰流・無刀取りの極意を極めている宗矩だ。


そんな中、木杖を奪われずに互角の勝負をした者が現れた。


その者は今、茨城城の小広間で俺と対面してひれ伏している。


40過ぎのおじさん、舘〇ろし感がある。


「真壁氏幹と申します。常陸国の発展のために尽力しとうございます」


「真壁・・・・・・氏幹?鬼真壁?塚原卜伝に直接手ほどきを受けた、あの真壁氏幹?」


「はい、塚原卜伝先生は我が師にございます。師の死後、棒術の腕を磨きましてございます」


「御大将、実力は本物にございます。雇われて損はなきかと思います」


真壁氏は実は俺の祖先の分家、同じ平氏、さらに鹿島神道流を学んでいる俺にはなじみ深い人物なのだ。


「常陸様も、鹿島神道流をお使いとか、塚原卜伝先生にお会いになられたことがおありなのですか?」


一番聞かれてはいけないことを聞かれてしまう。


困った、どう返事をするべきなのだろう。


しかし、この者なら家臣にしたい。


どうしよう。


と、困った顔で悩んでいると宗矩が、


「常陸様の素性を詮索するのは御法度、織田信長公ですら出身を気にせず、義息子にしていると言うのに不届き者」


と、一喝した。


あっ、そういう事にしているわけね。宗矩。


「ははは、まあ、俺の素性は禁足事項だから、それより常陸国の為に働いてくれるんだね?」


「はっ、この身を常陸国にうずめる覚悟にございます」


史実時間線では、確かにこの真壁氏幹は佐竹家が秋田に転封になったときに同行しないで1633年まで常陸国に住み、下館の寺に埋葬されている。


この者も俺と一緒な常陸国愛国者なのだろう。


「宗矩が腕を認めるなら雇いたい、今、塚原卜伝の縁ある地はこの柳生宗矩に任せてある。その地で道場を開き、足軽達を鍛える役目を申し付ける。当家は火砲術を重く用いているが剣術で基礎体力を付けることは重要だからね。剣術指南役として任命し3000石を与える」


「はっ、期待に応えられるよう励みます」


「宗矩、頼んだよ」


真壁氏幹を当家の剣術指南役として雇い、鹿島に道場を作らせるように命じた。


・・・・・・。


って、宗矩に一矢報いることが出来ないと当家で雇えないって高難度のような気がしてきた。


次、来るのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る