第174話 左甚五郎と萌え
左甚五郎は、土浦城の端に工房を構えていた。
慶次が準備したらしい。
なぜかその工房には警備は厳しく、甲冑を身に纏った門番が立っていた。
当然、俺が入るのは問題はない。
「入るぞ」
と、声をかければ門は開かれる。
中では10人ほどの同流派なのか弟子なのか仲間なのかが、一緒になって大手門に取り付ける予定の扉に彫刻を施していた。
「殿様、本当に良いのですか?自分で彫っていて何なんですが」
と、扉を見ると、左右の扉一枚一枚に俺が求めている、萌えが彫られている。
「おぉ、良いんだよ、これは素晴らしい、顔、もう少し可愛いほうが良いな、髪で片方の目を見えるか見えないかってくらいに隠してくれるとなおさら良いのだけど、この後、染色する?」
「はい、塗師もおりますので」
と、一人の職人を平身低頭で紹介された。
「髪なんだけど、一人はピンク、あっと、えっと、桃色に塗って欲しいんだ、で、もう一人は、薄い青色をお願いしたいのだけど大丈夫?」
「はっ、はい、できなくはありませんが、そのような異色の髪の色など見たことも聞いたこともないのですが」
「そりゃね、俺だって染色した人以外、地毛でそのような色の人見たことないから当然なんだけど、異色の髪色の娘、可愛いんだよ」
と、俺が言うと、左甚五郎が不安そうな顔で、
「これ、大手門に備え付けるんですよね?本当によろしいので」
「大丈夫だって、俺の責任だから、でね、城内の欄間も美少女を彫って欲しいんだけど、そうだな、天女がたくさん水浴びをしているような風景で」
「ゲホゲホゲホゲホゲホ、そんな欄間、聞いたこともないですぜ」
「本丸御殿、対面の間に使うから豪華にやっちゃって」
「殿様の自室ではなく、広間に?えぇい、こうなったらやけだ、とんでもねえの作って見せますってんだい」
と、左甚五郎は額に汗を垂れ流しながら不安の表情を浮かべながら、袖をたくし上げていた。
ふふふ、完成までもう少し、楽しみだ。
「くれぐれも、完成まで、茶々達には見られないようにしてね」
「殿様、これ見られたら俺達、首飛んだりしませんよね?」
「首は飛ばないけど、お初の痛っい蹴りはあるかもね、指示した俺はどつきまわされそうだけど」
「殿様、あっしは不安なんですが」
「大丈夫だって、命がとられることだけはないと保証するから」
「へっ、へい」
俺が、薙刀で追い掛け回されそうだけど。
俺の城なんだから、このくらいの遊び心は許してほしい。
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