第136話 赤い狐と緑の狸
しばらく待つと家康と二人の僧侶と忠勝が部屋に入ってきた。
俺は上段の間の真ん中、右前に蘭丸、左前に力丸が座り、その正面の下段の間に家康と二人の僧侶と忠勝が対面するように座る。
俺は元々、家康より位が高いので上座なのは当たり前なのだが、蘭丸と力丸も家康の主家である信長の使者の役目なので上座になる。
「お久しぶりにございます、大津中納言様」
と、草木染なのだろう緑色の平服で頭を下げる家康は合戦に出る様子ではなかった。
緑色の家康・・・緑の狸などと頭に過り一人で「くすっ」と、笑ってしまった。
「家康殿、上様の命にございます。出陣を」
と、家康より上座に座る蘭丸が言う。
「これはこれは上様も無理なことをおっしゃる、先ごろの地震で手痛くやられたこの徳川に兵を出せとは」
と、赤い法衣を身に纏った歳をめした僧侶が言う。
その声はとてもダンディーで、真っ赤な飛行機に乗る豚を思い出すが、・・・・・・。
「そのほうは何者?」
と、俺は聞くと赤い法衣の僧侶は
「申し遅れました、私は南光坊天海(なんこうぼうてんかい)」
黒色の袈裟の僧侶は、「こわっぱー」と、怒鳴りそうな痩せた僧侶。
「以心崇伝(いしんすいでん)と申します」
この二人か、・・・?
「家康殿、その二人に唆されたか?」
と、俺が言うと。
「何を失礼なことをおっしゃる」
「いかにも、徳川の地が甚大な被害は耳にしているはず」
二人の僧侶は言う。
俺が黙り混み沈黙になると、
ズドーン。
ズドーン。
ズドーン。
ズドーン。
と、南蛮型鉄甲船からの空砲が聞こえる。
「上様をこれ以上待たせると空砲ではなくなります、この浜松城に弾が飛んできます」
「な、ふざけたことをこの城まで飛ぶわけがない」
「火縄銃を改造したのは俺ですよ」
ズドーン。
ズドーン。
ズドーン。
ズドーン。
「北条の領地切り取り次第の約束を頂けるなら兵をかき集めましょう」
南光坊天海、やはり言ってきたか。
「兵をかき集められるのに、今は出さない、ふざけだ物ですね、徳川家康、あなたはもはや同盟大名ではない、家臣だ!自覚がない」
と、俺は強く家康を目を見て言う。
「ですから、領地を頂けるなら孤軍奮闘しようと言っているのではないですか」
「狐、貴様には聞いてない」
赤い僧侶、南光坊天海から狐の影が見える。
「なにをふざけたことを申しますか、中納言ともあろうものが」
「はははははは、なぜに俺が信長様を助けたかは知らなかったようですね。俺は妖魔を退治する陰陽師、明智光秀に取り憑いた狐を祓ったからこそ雇われた」
実際はチートスキル陰陽力は否定され、未来の知識が乞われたんだけどね。
「き、貴様か~!我が別け御霊(わけみたま)を討ち取りし者は」
赤い僧侶は立ちあがり懐に隠し持っていた短刀を抜き左右の手に持った。
「仇を討ってくれよう」
「鹿島神道流改陰陽道不滅明王如来 ノウマクサンマンダ バザラダン センダマカショラダ ソヤタラタ ウンタラタ カンマン、家康殿、取り憑かれる寸前でしたな ノウマクサンマンダ バザラダン センダマカショラダ ソヤタラタ ウンタラタ カンマン」
俺は立ち上り、太刀を抜くと家康は忠勝に首根っこを捕まれ後ろに放り投げられた。
襖にぶつかって倒れる家康は頭を打ったのか気絶した。
「わしも妖しき者とおもっていたのだ、えぇ~い、蜻蛉切の錆びにしてくれるは!」
廊下の忠勝の家臣が槍を渡す。
蘭丸と力丸も抜刀する。
以心崇伝は腰を抜かしたようで尻を床につけたまま後ろに下がろうと慌てていた。
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