第124話 天正地震・長浜城

俺は力丸と、150名の足軽を安宅船に乗せてむかう。


夜中なため仮眠を取りながらだが、安宅船のなかでも普段とは違う揺れがたまに起こっている。


余震なのだろう。


幸い、水面の揺れと水位の多少の変化があるが、津波は発生していない。


朝方になり太陽が上がり始めた頃、長浜城が目に入ってきた。


長浜城は俺の大津城に似ている琵琶湖に突き出た水城、本丸天守が一番湖に突き出ているのだが、瓦は崩れかしがり倒壊寸前に見えた。


大津城との違いは、大津城は築城時に俺が関与して地震対策をしている、長浜城はその技術の前の城、地震弱い。


史実では、山内一豊の娘が倒壊した柱で下敷きになり死んでいることで有名だ。


長浜城の船着き場に到着して船を降りると、足軽が二人槍を向けてきた。


「何者?」


それはそうだ、城を守る警備の兵なのだろう。


地震の混乱に紛れて城を乗っ取るもの略奪にくる者への警戒。


「地震の救援に来た、大津城城主黒坂常陸守である、長浜城城主、蘭丸殿の弟、力丸も一緒だ、安心せよ仲間じゃ、蘭丸殿は京であろう陣頭指揮を取る、これは上様に連絡はしてある」


と、言うと槍は地面に置かれ方膝を着いて


「無礼申し訳ありませんでした。よろしくお願いいたします」


と崩れ落ちていた、気が張り積めていたのであろう。


涙をグッとこらえているのがわかる。


「力丸、救援隊、治安維持部隊、炊き出し部隊、に手分けさせすぐに活動を開始、助ける者に身分の差はない、これは厳命である、取り掛かれ」


「はっ、御大将の命を皆のもの聞いたな、すぐに手分けして取り掛かれ」


と、力丸が足軽達に指示をだす。


「あ、それと余震が続く、皆のもの自身が怪我なきよう頼むぞ」


と、注意の指示をだし救援活動を行う。


町には倒壊した建物が多数あり、城も含めて壊滅できダメージだった。


ただ、直ぐに武装した足軽を出したことで暴動などは起こらず炊き出しでひもじい思いだけはさせまいと、大津城から運んできた鶏を使って炊き込みご飯と、豚汁を振る舞った。


五日ほど長浜城の庭に陣幕が貼られた中で、ひたすら陣頭指揮にたっていると、蘭丸が京の都から到着した。


「常陸様、ありがとうございます、ありがとうございます、このご恩一生涯忘れません」


「蘭丸、俺と蘭丸の仲ではないですか、もちつもたれずですよ」


「はっ、安土にも寄って参りましたが、お手配下された前田の松様、慶次殿、幸村殿が陣頭指揮にたって混乱を押さえていただきました。上様が大変満足しておられましたよ、ここは私に任せて、大津城にお帰りください、皆様がお待ちにございましょう」


「上様には御無事で?」


「はい、安土城は半壊状態ではありましだが、銀閣寺城はパネル工法や、Xの柱のお陰なのでしょうか、無傷に御座います」


「それは良かった、良かった」


蘭丸に引き継ぎをして大津城に安宅船で帰城した。


疲れた、慣れないことをしたせいか少し調子が悪い。


大津城に帰ると、桟橋で倒れて気を失った。




◆◆◆

天正地震

史実では帰雲城とその村は、一夜にして地滑りで消えたり、若狭湾で津波の記述があったり焼岳が噴火したりする伝承が残っております。

このあと、日本は地震、火山活動期に入ります。





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