第123話 天正大地震(注・地震描写あり)

 天正13年11月29日 1586年1月18日

 

正月が過ぎいつもの変わらぬ生活の一日の終わり、寝所に入り隣では茶々がすやすやと静かな寝息を立て始めていたころ、突如地鳴りが響きだした。


ゴーーーーーーーーーーーーーーーーー。


今日か、今日だったのか?知っていた天正地震か?


「起きろ、茶々」


と、大声で叫んだあと突如大きな揺れを襲う。


縦揺れ、横揺れなどと言う表現方法が用いられるが、本当に大きな地震と言う物は、どちらに動いているかなんてわからない物。


地球そのものが大移動しているかの如く揺れる。


俺は、目をこすって何事?と、思って布団に入っている茶々に俺の布団をさらにかけ、上から覆いかぶさる。


「地震だ」


「御主人様?」


と、布団の中から声が聞こえる。


大きな揺れはしばらく続いた。


30秒というところだろうか?俺は大きな地震を体験している、それに似ている、立っていられない。


311でたまたま訪れていた、いわきで6強の揺れを体感していた俺にとっては二度目だった。


揺れが収まったところで布団をはぎ取り、俺は耐衝撃型スマートフォンの懐中電気モードを使って部屋を照らした。


「茶々、大丈夫か?」


「はい、大丈夫です。今のは地震ですか?」


「ああ、後の世でも知られるほどの地震、天正地震だ、余震と言ってしばらく揺れが続く」


「御大将、大丈夫ですか?」


と、廊下の襖を開ける力丸。


「大丈夫だ、かがり火で城を照らせ、被害の確認を頼む、怪我人がいないか、火事は発生していないか、と、登城太鼓を鳴らして足軽を集めてくれ」


「はっ、すぐに」


と、言って、力丸は走り出す。


うちの城、大津城は築城時に俺の未来知識を使った耐震に力を入れた造り、壁にはXの柱が埋め込まれており、屋根は瓦より軽く防火性もある銅板瓦の為、被害は漆喰の壁に亀裂が走るくらいだった。


ただ、天守の屋根瓦はひどく落ちている。


「茶々、急いで着替え、広間に集めよ」


「はい」


広間には本丸御殿東西両方を住居としている、俺、茶々、お初、お江、お市様、桜子、梅子、桃子、その下の住み込み侍女と、夜番の警備勤めの家臣が集まった。


「皆、大事無いな?これよりしばらく余震が続く、気をつけよ、幸いにしてこの城は地震に強い作りで作っているが油断はするな。そしてこれからのことを大津城城主として命じる、お市様、留守居役をお願いします。茶々、みなをまとめる役となれ、お初、連絡係だ、桜子、侍女たちと炊き出しの準備、朝に多くの握り飯を配れるようにしてくれ」


「はい」


と、言う返事だけが小さく返ってきた。


「黒坂の名に恥じぬ振舞をしろ」


と、大声で叫ぶ。


「はい」


と、大きな返事が返ってきた。


俺はその返事を聞いたのち、お江、梅子、桃子に手伝ってもらい甲冑を着て玄関に出ると、力丸、幸村、宗矩、氏郷、政道が待っていた。


「氏郷、兵を率いて城下領民の救出活動を」


「はい」


「かしこまりました」


「宗矩、城の警備を」


「はい、かしこまりました」


「力丸、安宅船の出航の準備、食料を積んで長浜に行く」


「長浜にですか?」


「この地震で多くの被害が出るのは東近江、救援に行く」


「かしこまりました」


「幸村、陸路を兵を率いて安土に向かえ、慶次と松様に協力してもらい救援活動、炊き出しをせよ、急げ」


「はっ、すぐに」


「政道、銀閣寺城に馬を走らせ行け、上様に俺が救援活動に近江で陣頭指揮をとると伝えよ」


「はい」


俺は、家臣それぞれに指示を出す。


織田信長と長浜城主・森蘭丸は今は京の銀閣寺城、京の都から動くにも動けなくなることは想定できる。


だったら、俺が動かねば。


と、茶々が近づいてくる。


「行かれるのですね」


「ああ、こういう時に動かねば給金を貰っている意味、織田家の一門になった意味がない、茶々あとのことは任せた、蔵に眠る銭を使い、領民にひもじい思いだけはさせるなよ」


「心得ております」


と、俺の目をしっかりと見つめた。


キスをそっとし、


「いざ、出陣」


と、太刀を抜き高々と掲げた。




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