第121話 1586年正月

今年は正月を我が家、大津城で迎えた。


久しぶりに天守の最上階に上り、大津城下の町の先から登る初日の出に拝んだ。


正室の茶々、側室のお初、同じく側室の桜子が一緒に初日の出を拝む。


「あけましておめでとう」


「おめでとうございます」


と、三人はひれ伏し三つ指を着いて深々とおじぎをしながら挨拶をする。


「今年もよろしくお願い」


と、言うと桜子が、


「今年こそはお世継ぎを作れるよう努力したいと思います」


と、言うと茶々も頷き、お初は顔を赤らめて恥ずかしそうにしていた。


「あ、はい、頑張りましょう」


と、頭をかきながら言う。


お情けをくれと言ったり、お世継ぎを作れるようにって下ネタ全開だと思ってしまう自分が恥ずかしい。


戦国の世は、まだ終わっていない。


なら、家を存続させるにも子供は特に大切、特に俺みたいに兄弟や甥っ子などがいないものには尚更。


使命感を持った女性に子作り=下ネタと思ってしまうのは大変失礼な事、申し訳ない。


「つきましては予てより申し上げております、梅子と桃子も側室に迎えますから」


と、茶々が言う。


「へ?」


「屁は出ません。失礼ですね、梅子と桃子も年頃、嫁ぎ先を探しましたが城に残り御主人様と共に過ごしたいとの申し出を受けようと思います」


茶々はいざって時には鋭い目付きをし俺の眼(まなこ)に真剣に訴える。


「皆がそれを納得しているんだね?」


と、俺が聞くと皆は首肯く。


「わかったよ、俺の価値観だと今でも多いと言うかありがたいハーレム状態なんだが」


「はーれむ?御主人様ってちょいちょいわからない言葉使うわよね?」


ってお初が言う。


気を付けてはいるが言葉使いなどそうそう変わるものではない。


「南蛮の言葉で、多妻婚みたいな事だよ」


「南蛮の言葉ね~、前から思っていたけど、御主人様ってどこで南蛮文化学んだの?生まれ育ちは、常陸の国なんでしょ?」


茶々は知っているが、お初達には言っていない秘密がある。


未来人であると、言っていいのかな?と、思い茶々を見ると首を静かに横に振る。


秘密は隠しておけと言うことなのだろう。


「剣の修行で日本の各地を巡ったからだよ」


「なんか、釈然としないわね~、何か隠しているでしょ?」


「お初、お止めなさい。伯父上様に認めていただいた力をむやみに聞くものではありません」


「はい、申し訳ありませんでした」


お初が謝り新年早々気不味い雰囲気。


「マコ~、まだ初日の出拝んでるの~?お雑煮出来たよ~」


と、お江が下から大声で呼んでいる。


「お、おう!今、行く」


囲炉裏テーブルに向かうと、味噌仕立てのお雑煮が出てきた。


くぅ~お雑煮って、鶏だし醤油仕立てでナルトと水葉が乗っているんではないの?なんか、残念な気分がする。


俺が作って俺が知っている、馴染んだお雑煮をいつか作ろうと決めた瞬間だった。








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