第81話 大津城築城視察・奥二ノ丸御殿
織田信長が京の都に行く途中に寄ることも考え、建設を決めた奥二ノ丸御殿。
本丸天守、御殿より遅く建てたのにも関わらず、形が完成しつつあった。
遅れを取り戻そうと、総動員したのと俺が提案した、パネル工法で建築速度を上げたらしい。
総銅板で作られた屋根に金色の鯱と、真ん中には銀色の受雷神槍と言う名が付いた避雷針が光り輝いていた。
はっきり言って、俺が住む御殿より豪華だ。
中に入ると、この時代、最高級品である畳が廊下にも敷き詰められていた。
広間は30畳ほど、奥には上段の間が出来ている。
襖は金の下地に中国の三国志だかなんだかわからないが、おっさん達が描かれ、天井には様々な花が書かれていた。
狩野派絵師総動員したらしい。
この城、平成まで残すことが出来るなら間違いなく国宝になるよ。
そんな和室に似つかわしくない、長いテーブルと椅子が置かれているが、俺が求めている信長が座る為の特別な椅子は、まだ置かれていなかった。
「左甚五郎はみつからない?」
前回の視察で日本史史上一番有名であろう日光東照宮の陽明門の眠り猫の作者、左甚五郎を探すように頼んで領内で高札で探してもらったが、見つからなかったようである。
「はい、領内にはいない様子で」
だいたい、左甚五郎が今何歳なのかも不明。
まだ誕生していないか、子供なのか、違う名なのかもしれない。
この時代、改名することなどよくよくある事なのだから、探すのには無理があったのか?
「御大将、京の都の宮大工の彫刻師に発注しようと思いますがよろしいでしょうか?」
と、氏郷が聞いてきた。
仕方がないのでそれを了承すると、実はもう作られているとのこと。
奥の襖が開くと大きな一人がけのソファーのような椅子、クッションは南蛮からの輸入したものなのだろうか、ベルベッドと言うのかビロードと言うのか細かな模様が施された触り心地のよさそうな生地で作られ、背もたれの頭の上に来る部分には、今にも飛び立ちそうな鳳凰が彫刻され金箔で黄金の輝きを放っていた。
「すごい、まるで生きているようだ」
「はい、若いながらも驚くべき才能の持ち主でして、このようなものが出来上がりました」
「その彫刻師に会いたいのだけど」
と、氏郷に聞くと、
「召し抱えようとしたのですが、この椅子を完成させると旅に出てしまいまして」
「そっか、それは残念だね、もし、また会うことがあったら是非、会ってみたいからよろしくね」
と、氏郷に伝えた。
おそらく、これが左甚五郎なのだろう。
名前ではないのか?本名は違うのかな?
気になる。
これだけの彫刻が彫れるのなら美少女フィギュアも彫れるのではと、ちょっと期待してしまう。
平成に残してきた美少女フィギュア。
誰にも見られませんように。
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