第46話 春

 安土に残っている織田信長と安土城の本丸の庭に咲く花を見ていた。


山桜が三本ほど植えられており咲き乱れている。


庭には御座が惹かれその上に脚絆が置かれ織田信長と俺は座っている。


お市様が隣に座り、俺の脇には茶々が座っていた。


お江とお初は庭を走り回っており、森三兄弟の蘭丸、坊丸、力丸が警備をしている。


「常陸、女子は好かぬのか?」


と、いきなり織田信長は言ってきた。


「とんでもない大好きですよ」


素直に答えた。


「下女達に手を付けていないと聞いたぞ」


だれがそんなことまで報告するんだと力丸を見ると目をそらした。


お前か~。


「なんか、身分の上下で命令的に抱くとかそういうのは、俺の世界観ではないんですよね」


「あら、桜子たちは抱かれても良い、むしろ、お情けをいただきたいと思っていると思いますよ」


と、お市様が言う。


流石、未亡人は下ネタもOKなのか?


茶々を見ると顔を赤らめていた。


「ここにいる三人誰が良い?」


と、言い出す織田信長。


この場合、三人は下女ではなく目の前にいる三人の事なのだろう。


意味がはっきり言ってわからないけど。


「茶々は普段は静かではかない可愛さがあるけど、いざって時に心が強いし、お初はツンデレ具合が可愛いし、お初は甘えん坊で可愛いですね」


と、だけ言うと茶々の顔を見ると今にも沸騰しそうなくらいに顔を真っ赤にしていた。


「三人誰でも良いんだな?」


「はい?何ですか?信長様」


「バカか?」


いつも通りに言われてしまった。


「嫁だ、三人の中から選べ」


「ちょっちょっちょっと待ってください、俺は帰りたいのですよ、それなのに嫁とりって」


言葉を考えながら織田信長に聞いていた。


「帰すのは惜しいからのこのままここにいさせるために嫁を娶らせる」


「常陸様、私達はお嫌いですか?」


と、茶々が言い出す。


え?茶々達は了承済みの話なの?


「いずれかの娘をわしの養女にしたうえで、常陸に嫁がせる、常陸はこれで一門衆ぞ」


と、すごく真剣な鋭い目つきでにらまれ言われた。流石にその眼光に背く勇気はなかった。


「考えさせてください」


そう言うのが精一杯だった。


「三人の中から一人を選ぶための考える時間ですね?」


なんでお市様も追い打ちをかけるかな?


「あの、信長様、もしかしてお市様は知っているんですか?」


「茶々にも話した」


えっと、俺がタイムスリップしたのって内緒じゃなかったの?


じゃ~、俺がっき帰りたいって言ったのは未来に帰りたいって言葉なのをわかっているの?


それでも、茶々は嫁ぐの了承しているの?


と、思いながら茶々の目を見ると見つめ返された。


心は決まっているんだね。


でも、答えは出せない。


暫く考えさせてほしい。





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