第44話 褒美 正四位下参議常陸守
饗応の接待の終わった翌々日、織田信長に登城を命じられた。
今日は新築された茶室に呼ばれる。
流石に揚げ物に使った茶室には油の臭いが染み込んだらしく、俺が織田信長に料理を出す為の専用の部屋になるらしい。
新築の茶室は四畳半がまだ青々としており良い匂いだ。
日本人の奥底の心に染み着く懐かしい香り。
床の間には咲き始めたばかりの梅が飾られ甘いが春を感じさせる匂いが漂っていた。
これぞ茶室ですよね。
織田信長がたてた茶をいつも通り作法を気にせず飲む。
「はぁ~爽やかに抜ける抹茶の風味に程よい苦さと自然の甘さ、信長様のお茶はいつも美味しい」
と、素直に口に出すと織田信長は口元をゆるめていた。
織田信長が誉められるのは素直に嬉しいのだろう。
「饗応役ご苦労であった。褒美は何が良い?」
「そんな、貰っている給金の分働いただけですから」
「そう言うと思っておったは、働き存分な為加増する、三万石相当の金子から十万石にする」
「ん~、いまいちわからないんですよね、基本的に自分ではお金出してないし」
「受け取っておけ、常陸を客分だと言ったらあの者共が是非、城を与えて召し抱えたいと、言っていた。わしも、それだけの価値が常陸にはあると思ったから始めに城持ちを打診したんだがな、まだ城はいらぬか?欲しいならやるぞ」
「領民を束ねるほどの器では御座いません、それと、誰かに鞍替えはするつもりはないので御安心下さい」
「まぁ~言葉ならなんとでも言えるがな」
「鹿島の大神に誓います」
「わかっておる、給金に合わせて官位も上げる正四位下参議に推挙した。京の都の再建案は常陸の提案だと言ってな、朝廷の覚えもめでたいぞ」
「あの~常陸介兼務ならお受けしますが」
「『常陸』に、こだわりたいのだな、なら『介』から『守』になれ『常陸守』だ」
「え?でも、『常陸』は、大国格で親王の任国だから『守』ではないのでは?」
「わしを誰と思っておる、左大臣織田信長ぞ、そのような前例などにとらわれぬわ、ぬはははははははは」
確かにそりゃそうだ。しかし、茨城大好き人間としては『常陸守』素直に嬉しく、
「有り難くお受けいたします」
と、答えると一振りの太刀が俺の前に出された。
「これは?」
「景勝が常陸にと、置いていった太刀ぞ、受けとれ」
刀剣マニア上杉景勝の太刀と言えば間違いなく良い物、有り難く受け取った。
もちろん、その場で抜くような事をせず持ち帰って屋敷で見る。
拵は上杉家独特の鍔がない合口型の太刀、刃紋を一直線で綺麗な太刀だった。
家宝にしよう。
牡蠣フライのお代が業物の太刀、凄い時代だな。
上杉家伝来の太刀って確か平成で5億円とか7億円とかで話題になってるんだよな~。
平成にこれ持って帰れたら億万長者だ。
って帰れる気がしないが。
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