第42話 饗応の料理

 越後の上杉景勝、山形の最上義光、米沢の伊達輝宗への饗応の料理を考えて自宅屋敷の台所で悩んでいた。


目の前には桜子達が食材を並べている。


唐揚げ、一口串カツ味噌カツ風・橙汁塩ダレは決定。


揚げ物は珍しいはず、揚げ物攻めで行こうかと考えるが珍し過ぎる食べ物を喜ぶのかと疑問が出る。


南蛮西洋と言う海外に興味津々な織田信長だからこそ今までの料理は喜んで食べていたのではと。


だいたい、肉食も一般的ではない。


と、なると魚介類料理は必要。


あ!最上義光って無類の鮭好きで有名なんだよな。


上杉景勝は、酒好き・・・


酒は俺は未成年だからよくわからないから正式な饗応役に任せよう。


伊達輝宗かぁ~政宗なら「ずんだ」のイメージがあるけど、輝宗の時代にはないよね?


ん~伊達、伊達、伊達巻き~


甘い甘い卵焼き!


魚のすり身を加えた卵焼きなら珍しいはず、よし決まった。


唐揚げ、一口串カツ、鮭のフライ、海老フライ、カキフライ、そして、高級貴重品の砂糖を入れた甘い甘いオリジナル伊達巻きだ。


それに豚汁を作ろう。


今はまだ冬、寒い、奥羽や越後の客人には体を暖めてもらおう。


豚汁なら大量に作れるから、着いてきた家臣の人達にも配れば良い。


それが気遣いと言う饗応だと思う。


鶏肉を入れて炊き込んだご飯で、おにぎりと一緒に出せば良いのでは?


試作品の指示を桜子達に出すと早速、梅子が庭で鶏を首チョンパしていた。


もう慣れたけど、たまに首なし鶏が血を吹き出しながらかけていったのを見かけた日は少々食欲がなかった。


魚介類を欲しいと力丸に言うと越前から早馬の大軍で届けられた。


・・・織田信長客分、安土城留守居役奉行並み、饗応役料理係、従五位上常陸介黒坂真琴の名は伊達ではないらしい。


知らなかった。俺にそんなに権力があるとは。


鮭、海老、牡蠣、鱈、鯛、蟹まで届いた。


お~本場の越前蟹やん!


平成でもなかなか食べられなかったのに。


一口串カツの要領でこれらの食材はフライになっていく。


試食すると、言う言葉は出ないくらい美味い。


そりゃ~現地直送の食材だもん美味いよ。


生で食べられるくらい生きが良かったし。


「ゲホゲホゲホゲホ、ぐは~」


なんか異様な物が入っていた。


「何これ?」


「はい、鮒寿司を揚げてみましたが」


と、桜子が言った。


「うん、これはやめて」


好きな人には好きなんだろうけど、風味が飛ばないように程よく生揚げ、レア状態の鮒寿司のフライは俺には刺激が強すぎた。


これはチョビチョビ食べるもので一気に一切れを口に入れてはいけない気がする。


さて、問題のオリジナル伊達巻き。


卵は庭にふんだんにある。


何しろ庭の鶏は養鶏業でも営んでいるかのごとく増えていた。


脱走して隣の前田利家邸から少々苦情が来たが、慶次に唐揚げを届けさせると協力的になった。


たまに唐揚げを届けないとならない。


まぁ~前田利家とは仲良くしたいので当主不在であろうと家の者と縁が出来るのは良い。


さて、桃子に卵を10個ほど溶いてもらってる間に、梅子がさばいた魚、鱈を桜子に擂鉢でミンチにしてもらい、溶いた卵に砂糖を目分量で入れて貰い生卵を軽く味見。


うん、甘い。でも、丁度良い甘さだ。


それをミンチにした鱈と合わせて、油のひいた鉄板で焼かせた。


ふっくらと厚く焼くのは難しいから薄めに焼いて火が通った所で、綺麗な手拭いに置いて貰いくるくると丸めて出来たものを輪切りにした。


そう言えば、料理用巻き簾あるのかな?


簾はあるから小さいのを頼めば作って貰えるかな?


料理に集中しているので気がつかなかったが、茶々達が後ろに座っていた。


オリジナル伊達巻きに興味津々のようなので、まず毒味に俺が一口先に食べる。


「お!伊達巻きになっているやん、美味い、みんなも食べてみて」


と、茶々達に出す。


「マコ~甘くて美味しいよ~」


お江は素直で可愛いなぁ。


「真琴の癖になんでこう言うの作れるのよ、もう一つ食べてあげるわ」


お初の言葉には刺があって、ツンデレなんだろう?


茶々は黙々と静かに食べたあと、


「これは持成し(もてなし)に出すのですね、よろしいかと思います」


と、感想が出された。


と、試しに炊き上がった鶏肉炊き込みご飯も出すと三人は喜んで食べていた。


ん?帰って夕飯食べられるのかな?


俺、お市様に怒られないかな?


と、竹の皮に包ませた鶏肉炊き込みご飯のおにぎりをお市様にと、三人に持たせた。


饗応の料理完成。


あともろもろの料理は安土城お台所役に任せよう。







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