第36話 唐揚げ献上

 俺は今、安土城の茶室で鉄の茶釜に菜種油をなみなみと入れて、唐揚げを揚げている。


良いのか?茶釜、壊れない?この茶釜も博物館で見た気がするんだが、良いのだろうか?


♦♦♦


戦国時代で手に入る食材で唐揚げは完成した。


意外と作れるものなんだね。


完成から、桜子、梅子、桃子は試行錯誤が始まる。


なんか、鶏じゃなく、鴨や雀、雉に鶴まで唐揚げになっていた。


違うんだよ、唐揚げは鶏なんだよ。


雉に鶴って歯ごたえありすぎるから。

鴨の脂身だと微妙に脂っぽいから。

肉もギシギシ硬くなるし。


雀の姿揚げはガリガリバリバリしていて美味かった。


もちろん、力丸や慶次、宗矩にも食べさせる。


家では、力丸や慶次、宗矩、下女の桜子、梅子、桃子もみんな同じ食卓を囲ませるようにした。


同居してるんだから身分の隔たりとか平成生まれる俺には合わない。


桜子、梅子、桃子は恐縮していたため、策として俺や力丸や慶次や宗矩は一段高い部屋にして、桜子、梅子、桃子はその一段下の次の間で食事をとる。


食べるものは一緒にした。


家では酒は慶次しか飲まない。


俺、未成年だし。力丸もほぼ同じ年。宗矩なんかは、まだまだお子ちゃま。


ん?戦国時代だから関係ないのか?でも、まあ~いらない。


むしろ茨城のソールドリンク、ドクペは飲みたいがこれは流石に作れないだろう。


今日も丁度、唐揚げを揚げているころ茶々、お初、お江が遊びに来た。


「良い匂いがしているわね」


と、お初は正直に言う。


茶々は、はしたないと言う視線を送っていた。

でも、言いたいんだろうね。


お江は台所に走っていった。


「マコ~食べたい~」


最近、お江は「舐め舐めお化け」から「マコ」と俺を呼ぶようになっていた。


妖怪から人間に進化できたみたいだ俺。・・・お化けからか?。


「桜子、三人追加で大丈夫?」


「はい、もちろんです、梅子~庭の鶏、二羽絞めて~」


「は~い」


うん、新鮮な唐揚げなんだよね。


絞めたて、揚げたて、作り立て。


今、揚げている唐揚げが、浅井三姉妹に出される。


熱々を口に運ぶ三姉妹。


「あちゅい~おいちい~」


「変態のぶんざいでこんな美味しいものを食べてるなんて」


変態でも美味しいものは好きだから。ん?俺、変態ではないからね。お初。


「これは是非、伯父上様にも献上するべきです」


と、茶々が言った。


・・・・・・織田の料理人に俺、なっちゃうやん。


♦♦♦


と、言う流れで揚げたてを織田信長に召し上がってもらおうとしたら、火鉢がセットしやすいという単純な理由で茶室で茶釜で唐揚げを揚げている俺。


利休、真っ青?


あっ!織田信長の茶道頭は別か?千利休が茶人として一番になるのは豊臣秀吉がいてこそのはずだし。


熱々の唐揚げを赤い薄い少し平たい茶碗に盛る。


この茶碗も博物館で見た気がする。良いのだろうか?


熱々の唐揚げを竹串に刺して食べる織田信長。


「美味い、なんだこれは?」


「はい、未来の国民食でございます」


「国民食?」


言いすぎかな?カレー信者、ラーメン信者に叩かれそう。


「手軽に食べられるもので皆、食べています」


「農民もか?」


「信長様、私のいた時代では農民のほうがむしろ裕福なんですよ」


と、言うと少し驚いた表情をしていた。


「そうか、良い時代だな食べ物を作る者が裕福な時代、農民が農業に専念できる国、作りたいな」


そう言いながら、揚げた唐揚げを全部食べた。


一羽分。顔が油ギッシュになる織田信長。


そのテカリとは裏腹にまじめな表情をした。


「常陸、馬揃えを行う」


馬揃えとは軍事パレードみたいなものだ。


「京の都で馬揃えを行い、足利義昭の討伐勅命を出させるよう圧力をかける」


そう言って立ち上がった織田信長は茶室から出て言った。


唐揚げは気に入ったらしく、俺が屋敷に戻ろうとすると台所頭が俺のところに走ってきてレシピを聞きに来たので、別に秘伝でもないので教えてあげた。


安土城の台所頭。


本物の織田信長の料理人だな。ハハハ。と少し笑いが出てしまった。






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