第28話 浅井三姉妹
評定から抜け出た俺は、屋敷に戻ろうと本丸の庭をこそこそと歩いていた。
織田信長家臣団の武将に会わないように。
石垣や塀の影に隠れてはすすむを繰り返していた。
「うりゃ~」
「げふっ」
尻を蹴られた。
続いて飛びかかってくる何か、
「うわ~っとととと」
「何こそこそ歩いてるのよ」
聞いたことある女の声。
「舐め舐めお化けあしょぼ~」
振り向くと見知った顔。
「なんだお江とお初かよ、ふ~ビビった~」
「なんだはないでしょ、御成御殿から突然消えたから心配してたんだからね」
お~なんだこのツンデレテンプレ。
「うりゃ~」
再び蹴られた。
痛いからやめてくれよ。
「あしょぼ~あしょぼ~あしょぼ~」
と、お江は抱きついてくる。
「黒坂様、引っ越されるならなぜ言わないのですか?」
と、言いながら茶々が現れた。
「お江が遊び相手がいなくなってつまらなそうに過ごしてましたから」
茶々のツンデレテンプレはないのか?
「いや、安土の中の引っ越しだから言わなくても別に大丈夫かなって思って、城にも来るわけだし、それに引っ越し先すぐそこだよ」
と、本丸の塀の狭間から指差した。
「元明智屋敷ですね」
「らしいね、何もなかったから実感出来ないけど」
「お江、今日は放してあげなさい、あそこなら遊びに行けますから」
と、茶々が言うとくっついていたお江が放れる。
「ん?来るの?別に構わないけど」
「あそこに一人ですか?黒坂様は?」
茶々が聞いてくる。
「力丸と、下人が三人ほど」
「ほ~下人は男ですか?」
「いや、女だよ三人とも」
「うりゃ~」
「げふっ」
またしてもお初に蹴られた。
「なんなんだよ?」
「いやらしい」
と、何やら怒っている。
「舐め舐めお化け~あしょびに行っても良い?」
お江がうるうるした瞳で俺に言ってくるので目線までしゃがんで、頭を撫でながら、
「良いよ、ちゃんとお市様に言ってから来るんだからな」
と、返事をしてあげると軽く飛びはね喜んでいた。
「私も監視に行ってあげなくもないんだからね」
うん、なんだろう、お初のツンデレテンプレは。
「黒坂様、従五位上常陸介就任おめでとうございます、就任の祝いの品をお持ちしますので近くお邪魔させていただきます」
そう茶々は言って軽くお辞儀をして消えていった。
「舐め舐めお化けまたね~」
と、言ってお江はお初に手を引かれその後を追った。
ん~浅井三姉妹と親しくして良いのだろうか?と、少し疑問がわいたが深く考えるのはやめた。
とりあえず、お江の「舐め舐めお化け」呼びはやめさせよう。
舐め舐めお化けって変態じゃん。
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