第24話 屋敷と下女
夏が終わりに近づき赤とんぼが多く飛び始めた9月になると力丸が復帰した。
力丸は正式に俺の与力として織田信長の小姓から移った。
それと同時に俺の引っ越しが決まった。
流石に御成御殿では身分不相応。
明智光秀の残党の心配もなくなったとのことで屋敷を用意したとのことで引っ越しとなった。
まあ荷物はほとんどないし、力丸が人を集めたため俺は特にすることはなく、こちらの世界に来た時のリュックサックだけを抱えて初めて安土城の本丸を出た。
町中に行ける、町を見れると思っていたら、間違いだった。
本丸の門を出た大通りの道を少し下ったところで、力丸が止まった。
「こちらが常陸様のお屋敷になります」
と、言った。
大手門から出ていない。
結局は城の中だ。安土城内。
まあ、外出が禁止されているわけではないので後から出てみよう。
案内された屋敷は広い、ここに一人で住むのかと少し戸惑ったが、力丸もここに住むらしい。
二人でも十二分に広い。
広すぎる。
新築ではないみたいなので元々は誰かの屋敷だったのではと、推測できた。
玄関に近づくと女性が三人土下座をしていた。
うん、これやめてもらえないかな。
俺は近くに行き、ウンチングスタイルになる。
「土下座しなくていいから」
「とんでもございません」
と、土下座を続けている。
ここはこの屋敷の主らしい振舞をしないとだめのようだ。
「おもてをあげよ」
と、言うと少しだけ頭を上げる。
角度が変わっただけじゃん。
「顔を見せよ」
二回目でようやく三人は顔をあげた。
「あなた達は?」
と、聞くと、力丸が
「下働きの者でございます。こちらで常陸様の身の回りのお世話をいたします」
と、答えた。
「そうか、よろしくね」
と、返事をすると再び土下座スタイルになってしまった。
「滅相もございません。売られる私達を買い取り仕事を与えてくださる御主人様の為、ありがたく働かせていただきます」
「え?買い取る?」
と、疑問の声を出したら
「えぇ、上様の命により売られている若い女子(おなご)を買い取り、常陸の傍で働かせよ、とのことでその、夜伽をさせろという意味かと」
「はい?」
「ですから、常陸様に女子を与えよとのことでございます」
「マジっすか?」
思わず興奮と驚きの声を鼻息荒くして言ってしまった。
「この者たちは常陸様のお好きなようにして構いません」
鼻息が荒くなってしまう。
「顔しっかり見せてよ、と、名前と歳は?」
「桜子15歳にございます」
「梅子14歳にございます」
「桃子12歳にございます」
「抱けね~エッチしたらダメやん!倫理違反になってしまうよ、条例違反だよ」
と、思わず声が出てしまった。
平成の価値観?倫理観?から声が出た。
「好みではない者でございますか?すぐに買いなおしますが」
「いやいやいやいや、犬猫じゃないんだからそういうのしないでいいから、家事全般頼んだよ」
と、言って玄関を入った。
恥ずかしかった。
後で聞いたら三姉妹らしく、戦で村を失い人買いに捕まってしまったとのこと。
自由にしてあげることもできるらしいが行く当てがないらしく屋敷で働いてもらうことにした。
屋敷の中は。
うん、広い。
なんて表現が良いのだろうか?
田舎のお寺の本堂とか言えば良いいのかな?
部屋数もそれなり?数えきれない。
風呂も五右衛門風呂だけどあった。
「これ、だれの屋敷だったの?」
と、力丸に聞くと。
「逆臣明智光秀の屋敷でございました」
うん、亡霊出ないよね?
幽霊でないよね?
事故物件に近いやん。
少し不安な生活が始まった。
【補足】
『常陸様』は、主人公のことになります。官位があると官位で呼ばれます。
『上様』は、織田信長の事です。作中『御館様』とも呼ばれていますが、『上様』で統一していきます。
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