第22話 従五位上常陸介(じゅごいひたちのすけ)

「褒美は何が良い、貴様は」


そう言う織田信長。


「えっ、これ受けとりましたよ」


そう言って俺は未来では国宝だか重要文化財になる茶碗、曜変天目茶碗を両手で持ち上げた。


「貴様には価値のないものを授けた所で褒美ではあるまい、それとは別に望むものをくれてやる」


確かに俺にはアニメのキャラクターが書かれている茶碗のが価値があるし、茶碗なんて100均の茶碗でも十分、高い茶碗などには興味がない。


高校生で茶碗に興味のあるほうが珍しいのではないだろうか。


褒美ね、給与も貰ってるし刀も貰った何がある?


「貴様は無欲ではあるまい?」


欲?欲はあるよ、食欲、物欲、睡眠欲、そして、性欲。


って、ずっと気になっていたことがあった。


「なら、名前で呼んでもらえませんかね?ずっと『貴様』なので」


「名か?茨城の暴れ馬か?」


「それは、友達の間で呼ばれてたあだ名なんでやめていただきたい、黒歴史を思い出す」


「なら、常陸と名乗れ、褒美の名じゃ、鹿島神宮にゆかりあるなら常陸介じゃ、黒坂常陸介実琴」


「あれ?それって官位ですよね?」


「バカか?だから褒美なのじゃ、従五位上常陸介(じゅごいひたちのすけ)じゃ」


「え?官位持ちになるんですか?」


「いやか?」


「謹んでお受けいたします」


俺は歴史シュミレーションゲームが好きだ。


あこがれはあった。


官位官職にそれがこの時代に来てわずか二か月ほどでなれるのだからこれは素直にうれしい。


そして、自分の出身地の官位なのだからなおさらだ。


あれ?でも、今現在、織田信長って無位無官のはず?本能寺の変が起きる前に退いていたはずなのに、任命する権限あるのかな?


「信長様って今、無位無官ですよね?」


「だな、だがそのくらいの官位官職なら朝廷に認めさせることなど容易い、猿でさえ筑前守だからな」


本能寺の乱で織田家の力は弱まってはいないことだからこそ言える言葉に感じた。




 

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