第7話 スマートフォン
リュックサックの中身を確認した。
突き返された旅行情報雑誌、ららぶ。
ハンカチ、
ティッシュ、
財布、
修学旅行旅のしおり、
ソーラー充電型モバイルバッテリー、
そして、
耐衝撃型スマートフォン。
俺は、りんごが書かれたスマホではない。
工事の現場監督が好んで使う耐衝撃型スマートフォンを愛用している。
なぜかって?単純に落として壊すのが嫌だったからだ。
少しごつく、カメラの性能も飛び抜けて良いとはいいがたいスマホ。
「お~あったあった、これこれ、とりあえず電話を・・・・・・ですよね」
電波は当然入っていなかった。
どこかでまだ、俺は平成の世だと疑っていた。
大がかりなドッキリなのではと。
年末年始スペシャル特番の撮影なのでは?と。
「なにをしておる?板など持って耳に当てて」
そりゃ~変な人に見えるよね。
電話という物を知らない者には説明のしようがない不審な行動。
かまぼこ板を耳に当てていると言えばそう見えるだろうが、あれ?板型のかまぼこも戦国時代よりあとか。
「これは、わかってもらえるかわからないのですが」
「わかるか、わからないかは、わしが決めること、それはなんだ?」
「これはスマートフォンと言って電話、遠くにいる人と話すことが出来る品物なんです。
この機械に似たものをほぼ一人一台持っていて遠くに離れていても近くにいるかのように話すことができるんですが、まぁ~その相手もいないし、電波もないし」
手を出す織田信長に俺はスマートフォンを渡すと、じっくりと見ているがすぐに返してきた。
「使えないものなどゴミでしかない、それが未来の絡繰り物でもな」
確かに、電波の届かないスマホはカメラでしかない。
織田信長って宣教師からの日本では珍しい南蛮の贈り物も数点並べられたけど、気に入った帽子しか受け取らなかったって言う人物、必要がなければ欲しないのかな?
時計だって、カレンダーだって電波の届かないところは・・・・・・?
【1582年6月24日11時38分】
ん?スマホの時計アプリってここまで出るのか?
絶対に過去に戻ることは想定して作っていないはずなんだけど、すごい。
アプリ製作者の遊び心?
感心すると同時に笑いが込み上げてきた。
「あはははは、なんだよこれ、こんなのありかよ、あはははは、ぱくたれてる」
【ぱくたれてる】とは、茨城北部弁・福島県南部弁で【壊れてる】【いかれてる】に該当する方言だ。
人間、本当に自分の脳のキャパシティー外の出来事が発生すると笑いが出てしまうが、ひとしきり笑った後、俺は固まった。
「やっぱりタイムスリップしたのか、俺の人生にドク博士を友人にしておくルート存在しなかったはずなんだけどな、β線?α線?スマートフォンで行けるんだっけ?シュタゲーか?」
ぶつぶつとつぶやく。
「貴様は夢だとでも思っているのだろうが、これは現実だ受け入れろ、地球が丸いと知った時のわしのように見えるぞ」
日本で一番最初に地球が丸いことを理解したと言われている織田信長。
でも、それは正確ではないと思う。
朝廷の職である陰陽師は星を観測しており、その技術は意外にも高い。
日食月食を観測しているのだから。
さらに古代遺跡には星を観測していたと推測されるものも存在する。
日本人で地球が丸いと理解した有名人は?と聞かれたら安倍晴明と俺は思っているが、平面説や天動説が一般的だった時代に理解する柔軟な頭脳、先進的な頭脳がある織田信長は間違いなく聡明だ。
となると、俺が未来の話をして信じるのも少しはうなずける気がする。
そう理解する道しかないと思えた。
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