聖域都市その1:前編
この大陸における、人語を理解しているという意味での人は、大きく4つのいわゆる『種族』にまとめられる。
1つは我々がいうところの地球に住んでいた人類、この世界でいうところの『
もう1つは、この大陸に元々住んでいた『猫』と呼ばれる獣人で、頭が我々の知る猫であること、及び彼らが自ら名乗っていたことが名前の由来である。
3つ目に、人と猫が交わることで生まれた『耳付き』。彼らは頭に猫耳が付いたり、目がいわゆる猫目になるといった特徴がある。猫耳が付く場合が多く、それが名前の由来にもなっている。
最後に『
やっかいなことに外見だけでは、刻人と普通の人や猫、耳付きを区別することは難しい。刻人は白髪になることが多く、それが彼らの特徴であるとはいえるが、別に白髪にならなくても刻人であることもあるため、それが絶対というわけではない。
さて、最近になって『第5の種族』が生まれたという、研究者の報告がある。
彼らは、外見こそ上記4種族であるが、超能力とも魔法ともつかない特殊な力を発現するという。
まだ種族と呼べるほどの人数が確認されていないため、名前はなく上記4種族の中に彼らがいるという現状である。
「ニューラグーン警察のものですが、入ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、はいどうぞ」
と、ニューラグーン市街にある『ストッゲート』という小さなホテル(来訪者であるオーナー言うところの『旅館』)の一室に入った亜季は、部屋の惨状を見て、かるく首をかしげた。
「あ、検死官さん、状況はどうなっているのでありますか?」
「うん、そうかそうか」
「あのう……」
「どうした?」
鬼太郎のような髪形の検死官が、ようやく亜季に気づいたように、そう返す。
「ふう、やっとこちらの話も聞いてもらえるでありますか。この部屋の状況を教えてほしいんですよ」
「ああ、そんなことか」
「そんなこと……」
「被害者は、キーティングとかいう州議員。脳天に
「なるほど」
と、亜季は軽くうなずく。
その時、制服警官が、大声で、彼女の名前を呼んだ。
「阿武隈捜査官!」
「にゃ、なんです?」
猫耳を立たせながら、亜季は制服警官にそう返す。
「被害者の奥さんが、支庁に来たそうです」
「うん、わかった」
「それが……」
「キーティング夫人、その」
「なんです?」
キーティング夫人は口ごもる係長を見て、キョトンという感じの表情をしながら、たずねた。
キーティング夫人は白髪で、幼さと老成した雰囲気を漂わせている
「貴女はつまり……」
「ええ」
と、キーティング夫人が微笑みながら語る。
「夫を殺したのは、私です。殺した理由は彼が男と浮気したから」
「マジかよ……」
同席していた崇は、唖然とした顔で、そう呟いた。
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