貴方が隣に居てくれたから、花は必死に上を向いて笑った

椛縞しげ

0.プロローグ

心地よい広々とした2DKの木床部屋でふと目が覚める。まだ温もりを感じ布団に居心地良さを覚えながらも私、瀬田花せだはなは欠伸し体を起こした。

 窓のカーテンの隙間から照りつける自然光が眩しく皺を寄せるが、とてもいい朝だと鳥が知らせてくれるようで。思いっきりその光を浴びようとカーテンを全開にした後、布団を畳み隅に置き百五十センチの身体を動かし始める。

前は早朝に起きるのが苦手だった。亡くなった彼こと篠崎晴人しのざきはるとが側に居なくなった寂しさにやる気をなくすほど憂鬱になってしまうから、いつも昼頃に起きるのが当たり前だった

私が生活に慣れたのは一年半ほど。晴人が亡くなってから二年は経つ頃には朝型の起床、朝御飯の準備をするようになった。

今では朝の日課を続けるのが楽しくて起きている。


ーーそして朝の日課で忘れていけないのは「晴人」のお参り。

満面の笑みを浮かべている写真はいつも輝かしい。リビングの棚の近くまで近寄り手を合わせ今日のことを話す。


「晴人おはよう 私、また早く起きれたよ。今日ねメールでね上司から任せられてる"コスメかわいい"案件、今度私も同行するんだって来たの。凄いでしょ。初めてくれた晴人のおかげだね ありがとう」


写真立て周りには1本の枯花と一通の手紙。

仏壇やロウソクなど置くスペースがないためリビングの棚の上にしか置くしかできない。

そんなんでも私は、毎日花と写真に話すことだけ、癖のように続けた。

母が生きてる時にやっていた癖だと父は言っていたのを覚えているが、お構いなく晴人だけには素直に感謝できる。私の好きな人。

自然と触れ合って話すようにできたことも、朝起きれたことができたのは"晴人がいた時の幸せ"に救われたことがあったから前を向けれるようになった


懐かし記憶が思い出すとキリがないほど記憶が巡り、ニヤニヤと顔を緩ませてしまう。

晴人と私が出会ったのは、大学受験受からず寂しさからの気持ちを吐き出したいべく勇気をもって家を出た時だった。

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