ヒール

チキン

一話完結

ぼくはヒールをやっている。


ヒール、つまり悪役だ。


ちびっこヒーローショーの怪人役をやっている。


正義の話にはヒールがかかせないものだ。


悪役がいないと盛り上がらない。


ヒーローだけでは平々凡々、つまらないストーリーになってしまう。


ぼくはこのヒールをやることにとても誇りをもっている。


悪をやっつけるのに子どもたちは一致団結してヒーローを応*する。


このひとつになっている光景を見るのが好きなんだ。


たとえ嫌われ役でも、自分が一役かってると思えたらやりがいを感じられる。


ぼく的にはヒールの方が主役に思えてしまうんだ。


目的は悪を退治することだろ、

その目的役をぼくがやっているということだ。


悪がハッキリしているところも好きだ。

日常では善と悪がなんかあいまいなところがあって、どっちが弱い者いじめをしてるんだかよくわからなくなるんだ。


よくわからなくなる。


もちろん常識的な善悪はわかっているつもりだ。

でも常識的じゃなくなると判断がつきにくくなる。その時はどうやら多数決になるみたいだ。


結局人っていうのは正義をハッキリさせたいものらしい、悪いと決めつけたいものらしい。


あんまり考えすぎると頭がこんがらがってきちゃう。

考えるのは苦手だ。

まぁ僕の判断基準は心が痛くならないかどうかだな。




さて、もうすぐヒーローショーが始まる。


開演10分前だ。


今日もお客さんはチラホラ。


多かろうが少なかろうが立派に怪人役をやるまでだ。



怪人のスーツに身を包む。


今日はイカ星人だ。


よろしく頼むゲソ、イカ星人。




さて、いっちょう暴れてきますか!

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ヒール チキン @green4649

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