幽鬼姫伝説

奏 舞音

序章

 幽鬼ゆうき――それは人の怨念から生まれた醜い鬼。

 幽鬼は闇を生き、人間を喰らい続ける。

そして、喰われた人間もまた幽鬼へと変わる。

 人間に恨みや憎しみの感情がある限り、この負の連鎖は止まらない。

 哀しいこの連鎖を止めることができたのは、美しい心を持つ一人の娘。

 その娘は、暗い闇の中を生きる幽鬼でさえ光に還すことができた。

 幽鬼を従えた娘は、いつしかこう呼ばれるようになった――〈幽鬼姫ゆうきひめ〉――と。


 しかし時代が変わり、人々は幽鬼姫が人間を守ろうとした存在だということを忘れてしまった。その力を恐れ、幽鬼姫が幽鬼を従えて人間を襲っているのだと思うようになった。

 人間を守ろうとした幽鬼姫は人間に裏切られ、その姿を消した。

 それでもなお、幽鬼姫の力は受け継がれていく――人間の心に闇がある限り、幽鬼が存在する限り。

 

 

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