『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』【2022/6/7公開中】

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(映画/監督:安彦良和/2022)


 シリーズ最初の作品、いわゆる1stガンダムのTV版第15話『ククルス・ドアンの島』を、拡大して描き込んだ作品。


 元・ジオン軍のモビルスーツパイロットだったククルス・ドアン。彼は民間人が無惨に死傷する様子を見て、孤児たちを連れてある島へと脱走する。そこで子供たちは家族を亡くした傷を抱えつつ、ドアンに守られ生活していた。


 一方の主人公、アムロ・レイたちは、ドアンの存在を知らされぬまま島の強硬偵察を命令され、ドアンの反撃に遭う。取り残されたアムロは、そこで自分を倒し、ガンダムを隠したドアンと、彼を慕う子供たちに出会うのであった。


 アムロ救出もままならぬ中、島には今度はジオンの特殊部隊が攻め込もうとしていた。サザンクロス隊と称される彼らは一流のパイロットたちであり、かつてのドアンの部下でもある。


 さらに、ドアンは子供たちに隠れて何某かの策略を練っている様子なのだが……。

 アムロは無事脱出できるのか? 子供たちの運命は? ジオン軍の真の目的とは?


 いや~、やっぱりいいね、1stガンダム。以前も劇場版でレビューしたが、なんだかほっとする。

 それはいいんだけど、ドアンの駆るザク(通称ドアン・ザク)、強すぎやしませんかね? これは後半、サザンクロス隊との戦闘での話だけど。


 アムロの所属部隊であるホワイトベース隊の機体が次々にやられていく中で、ドアン・ザクはヒートホーク(斧)だけでバッタバッタとかつての部下を仕留めていく。

 筆者が一人で観ていたら、「つ、つえぇええええ!!」と驚嘆の声を上げたことだろう。


 最後にドアンがどうなるかは置いておくとして、人間の営みが丁寧に、念入りに描き込まれているのも印象的だ。戦争とは関係のないこと(水の確保とか、山羊の乳しぼりとか、○○くんの誕生日がどうとか)といった諸事を、一つ一つ包み込んで観客に手渡すように描く。

 これが平和の在り方なのだろうということが、ダイレクトに伝わってくるのだ。


 また、映像も凄い。『閃光のハサウェイ』ほどではないが、地面に足が着いた、いい意味で泥臭い戦いが観られる。いや、だからドアン・ザクが強すぎて……。

 このへん、過去との因縁がもう少し描かれてもよかったかもしれない。


 いずれにせよ、戦争をモチーフにしながら実にハートフルな作品に仕上がっており、一見さんにも特に支障はないかと思われる。

 これを機にガンダムの映像作品からは引退すると仰る大御所・安彦良和監督(今までは作画監督とかキャラデザとかなさってました)に、大きな拍手を送りたい。


 お薦め度高し。

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