鬼童衆 ~双鬼~
こたろうくん
第1話
夜の都心部。人は出歩かず、しかし灯りは消えず。小中のビルディングが立ち並んだその街並みを、街灯の光が届かぬビルの屋上を駆けては飛び、渡って行く黒い影が一つ。
これは一種の都市伝説となっている、夜な夜な黒いライダースを着た
仕事人。パニッシャー。エクセキューショナー。髑髏仮面にゴーストライダー。様々な呼び名があるが、特にこれと言ったものが無く、彼は単に怪人とかそれくらいで構わないと、そもそもどう呼ばれているかなど気になどしていなかった。
仕事の依頼を受ければ頷き、報酬と引き換えに誰ぞの命を奪いに行く。死神とも呼ばれたことをその時彼は思い出した。
防弾にして防刃の特性ライダースは闇に良く溶けるが、今季は夜でもまだまだ暑く、些か心地が悪い。今回の彼の目標は先日この都市に入った不審人物の始末であった。
どういった人物かは知らされず、ただそれが居るという雑居ビルの住所だけを”トレーダー”から与えられた彼はしかし文句を言わず仕事を始めた。
ビルを飛び越え、次のビルの屋上へと着地した彼はポケットから携帯を取り出し画面を点灯させる。その灯りに照らし出された彼の顔は髑髏。それを模した仮面。強化プラスチック製のそれは防護は当然ながら何よりも正体の秘匿、そして恐怖心をあおる為に死を連想させる髑髏をモチーフとし、そしてその死は同じ人により齎されるものだと知らしめるべく防護機能の低下と引き換え顎から口元を彼は敢えて仮面から曝している。
とは言え、御大層なのは仮面に籠められたその意味だけであり、ヘルメットも兼ねたそれのさて防御力と言えば拳銃程度ならば一、二発は耐えることが出来るであろうが口径により。そもそも顔の下半分を露出している為、防護面では最低限と言わざるを得ない。
機能面に関しても視界は当然僅かに狭まり、未来的なHUD機能なども当然ある筈無く、無線も内蔵されていない。だから彼は情報の確認のためにわざわざ携帯端末を取り出して操作し、マップアプリを使用して目的の雑居ビルに向かっているのである。
この辺り、あれかな? と彼は口の中で呟き、屋上の転落防止の柵の前まで歩み寄り向かいのビルを見詰めた。
何処にでもある三階建てのビル。やや年数が経過している様子で、街灯に照らされた外壁はつたが這い薄汚れている。時間にして午前二時ちょうど。まだ明かりが最上階である三階には灯っていた。
「誘っているのか。……気に入らないが、やむを得ん」
彼は携帯を消灯しポケットへと突っ込むと、しかし今いる五階建てのビルから飛び降りるわけにもいかず、振り返って屋上への出入り口へと向かった。
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