中学編~第二話

「おー、おかえり葵。初めての学校はどうだった?楽しかったか?」


 家に帰って着替えをして、速攻店へ向かった。


「日本の女の子ってなんであんなうるさいの……」


「転校初日だし、しょうがねぇんじゃねぇか?一応言っておくが、日本中の女がみんなうるさいわけじゃねぇぞ?大和撫子つってな、世の中には……」


 雅やんの日本女子自論を聞き流しながら、『わかってる』と心の中で反論する。うちの母親だって、父親と世界各国飛び回ってはいるが、元々おしとやかで物静かな方だ。父親のことが好きなのが伝わってきて、見ているこっちが胸焼けしそうになる。


 以前、『なんで母さんまで一緒に危険な仕事に着いて行くわけ?』と聞いたら、『パパといると色んな経験出来るでしょ?だから、お仕事も結果的に捗るの』と言って、嬉しそうに笑っていたのを思い出す。無自覚に惚気られて、子供ながら何も突っ込めなかった記憶がある。


 そんな母親を知っているから、日本の女の子がそうじゃないということも理解しているが、英国にいた頃、両親の仕事もあって大人と接する機会は多かったせいもあって、どうしても同年代の子たちと接すると煩わしく思ってしまう。ようやく自論を語り終えた雅やんに、愚痴を零していると段々お店が賑わってきた。


 雅やんは忙しく動きながらも、他のお客の相手をしていた。

 カウンター席の端っこで甘いものをつまみながら、店の様子を眺めていると一人の男と目が合う。この店で客と目が合って、視線を逸らさないということは、つまりそういうことだ。会社員だろうか。中性的な顔立ちで、まだそんなに年もいってなさそうだった。


「隣いいかな?」


 返事を返すと、柔らかな笑みを浮かべて男は隣に座った。

 名前は巽といって、なんでも27歳で会社の重役を勤めているらしい。こちらの年齢を聞かれたから、咄嗟に高校生だと答えておいた。流石に、中学生とばれたら遊んでもらえないだろうと思ったからだ。前から興味がなかったわけではないし、せっかくなので誘いに乗る。


「俺こういうトコ初めてだから、優しくしてもらえると嬉しいんだけど」


 雅やんの店を出て、適当なホテルに入る。いくらか会話をしてそのままベッドへ引き倒された。


「……っん……、君ほんとに初めて?」


 巽のものを言われたとおりに舐めあげていると、上擦った声音でそう聞かれる。


「そうだよ。女の子とはシたことないし、男の人も巽さんが初めて。俺そんなに上手い?」


 軽い調子で答えるとあっさり頷かれてしまう。葵の答えを聞いた巽は、呆れとも苦笑とも区別のつかぬ、なんともいえない表情をしていた。

 そのあとは身体中を丁寧に触れられて、愛撫され、初めてだというのに痛みなんか感じる間もなくて、気づいた時には巽の腕の中にいた。巽を起こさぬように腕の中から抜けて、シャワーを浴びる。


 巽は自分のことを『上手い』と褒めたけれど、巽の腕も相当のものだと思う。初めてだから優しくとは言ったけれど、本当に痛みも感じず気付いたら腕の中にいるとは思いもしなかった。

 男同士の場合、本来の用途とは比べものにならない質量のものを挿れるわけで、葵自身調べた情報にだってどれも『痛みを覚悟しておいた方がいい』みたいなことが書いてあったのだ。


「巽さん…相当やり手だよな……」


 シャワーから上がって、髪を乾かしながらつぶやく。でもそのおかげで、嫌なトラウマとかそういうのは植え付けられないで済んだのだから、巽には感謝しなくては。髪を乾かし終わって再びベッドに潜り込む。今日も学校があるけれど、起きるには少し早い。今、巽に起きられてしまうのはさすがにどんな顔をしていいか分からなかった。

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